今年2月、女子バスケットボールの日本代表は世界予選でグループ1位となり、パリ五輪への出場を決めた。チームを指導した恩塚亨ヘッドコーチは「これまでの経験から選手を怒る指導は非効率であることに気づけたから、パリ五輪の予選も勝つことができた」と語る。ジャーナリストの島沢優子さんが聞いた――。(後編/全2回)
「子ども扱い」されていると感じていた選手たち
(前編から続く)
筆者は仕事柄、スポーツ指導者や保護者と話すことが多い。そこで「(選手や子どもに)もっと強くなってほしいのですが」という相談をよく受ける。大人たちのいう「強さ」は、強気なプレーとか、リードされても動じない逆境力、高いレベルに挑戦する勇気などだ。その際、恩塚亨ヘッドコーチ(HC)を手本に個々が尊重されることや主体性の大切さを話すが、わかってもらえたのか? と悶々とする。
恩塚ジャパンが発進した2021年当初は「なりたい自分に向かって、内側から湧いてくるエネルギーでやる。そのエネルギーが勝つためには必要なんだ」と口頭で説明していた。が、少々子ども扱いされているように感じると選手から聞いた。そこで他競技の五輪金メダリストを招き、選手たちに向けて話をしてもらった。
まず「代表チームって難しいよね」という話から始まった。それぞれが所属チームでは圧倒的に主力のポジションにいる。そういった共通のバックグラウンドを持った者たちが集まるのが国の代表だ。そのなかで、否が応でも試合に出る者、出られない者に分断される。チームでありながら競争相手でもある。それでもチームとして戦わなくてはならない。協働しなくてはならない。
いつも一緒にいるわけではない環境で、どうやって心をひとつにして戦うか。
「そこが大事だよね」