「Bリーグの敵」から「日本代表の仲間」に
ただし、新参者の僕でしたが、その環境の中でとても早くチームに馴染むことができたと思います。
それは、敵であるとはいえ普段、Bリーグで対戦していることで「彼はこっちにドライブへ行くことが多い」とか「彼はここからだとシュートに行くことが多い」といった具合に、チームメートたちがどう動くかを知っていたことが大きな要因でした。
そのため、合宿の期間は短かったにも関わらず、それ以前からすでにケミストリーができあがっていたように感じられたのです。
こうして、最初は緊張感を覚えた僕の「日の丸デビュー」は成功裏に終わったのです。
トムコーチからの熱心なアドバイス
僕が日本代表に早い段階で馴染むことができた理由のひとつに、トムコーチの存在があります。
帰化後、代表に招集されると彼は、僕がチームに加わったらどういったことをしてもらいたいのか、そしてチームのスタイルに僕がどれくらい合っているのかを、映像を見せながらとても熱心に説明してくれました。トムコーチが率いていた時代の女子日本代表の試合や、僕が加入する前の男子代表の試合の映像です。
僕の加入前のワールドカップ・アジア地区予選で、日本は中国に連敗したり、オーストラリアに力の差を見せつけられたりと苦しんでいました。個人的にそうした試合を見ながら、もし自分が入ったらどういう役割を担うのか、自分ならどう対応できるのか、強みをどう生かせるかなどと必死で考えていたのですが、トムコーチが映像を見せながら僕のすべきことを指示してくれたおかげで、よりはっきりとした形で理解することができました。
バスケットボールでは通常、新しいチームに入るとチームメートたちとの練習を重ね、時間をかけてケミストリーを高めていくものですが、トムコーチと映像を見るという作業のおかげで、さほど苦労をせず、短い時間でチームにフィットできたのです。
また、彼は帰化選手ではないものの、日本のリーグでプレーをした経験もあり、日本語を学んだということもあって、僕の立場などもわかってくれていましたし、同じアメリカ出身だということもあって、僕としては非常に接しやすいと感じています。