なぜ書店は取り寄せに2週間もかかるのか?
日本の出版物流は雑誌物流に書籍を載せる形で行われているので、全国津々浦々まで安価に届ける事ができています。しかしながら、定時定量配送の雑誌物流に併せて書籍を送るので、書籍物流は迅速性や柔軟性に著しく欠けています。ネット書店の注文が翌日に届くのに対して、書店店頭での注文は早くても3日、場合によっては「2週間かかります」と言われてしまいます。これでは、本好き読者が書店から離れるのも仕方ありません。
経済産業省が2023年10月に「国内外の書店の経営環境に関する調査」というレポートを出しています。
対象国はアメリカ、フランス、ドイツ、韓国、イギリスですが、総じて日本と比べて書店の経営環境は上向きです。「書籍と雑誌の流通経路」は日本だけが同じで諸外国は別です。人口や国土の広さに比べて日本の書店数は多い傾向にあります。ドイツは注文すると翌日に書店に届きます。フランスには「反アマゾン法」あって書店が守られているなど、興味深いレポートです。
ここからは出版界の皆さんに異論はある事は承知の上で、私が思う日本の書店を守るために出版社、取次、書店が行うべき提言です。一般読者の方々はどう思われますか?
再販制度を撤廃し、書籍中心の物流網に変える
●出版社が行うべきこと
1.出版物の価格拘束をする再販売制度を放棄するか、流通側(取次2%・書店8%)に利益を還元して、書籍の販売価格も順次10%から15%まで上げる。
……再販制度と委託制度は、売り上げが伸びている時は機能していましたが、売り上げが下がる現状では、弊害のほうが大きいことを認識しなければなりません。この事を真正面から議論しないと、日本のすべての書店は消えてしまいます。(詳細は拙著p169参照、以降はすべて拙著より)
2.新刊は発売日の3カ月前に書店と読者に告知して、事前注文を取る出版体制を構築して、出版物の粗製乱造を防ぐ。
●取次が行うべきこと
3.書籍専用物流の構築
……トーハン、日販で合同の書籍物流網を整備して、物流速度を大幅に改善し注文品の翌日店頭到着を実現して、読者の書店への信頼を取り戻す。3PL(※)も視野に入れます。
4.流通側への利益再配分に関する出版社との交渉を主導する
……取次は各出版社の加重平均仕入正味を把握しているのですから、弱小出版社にばかり不利益にならないようにして平均仕入正味60%平均出荷正味70%を実現する。粗利益改善が果たせれば、書店も取次も当面の営業赤字は解消されます。(詳細はp62)
※サードパーティーロジスティクス(Third Party Logistics)=倉庫管理や輸送などの物流業務を自社で行わず、物流専門企業に委託する物流形態のこと