出版社都合になっている書店の主権を取り戻す

●書店が行うべきこと

5.自主仕入れへの移行
……書店は取次頼みの仕入れから卒業して、買い切り商材を含めた積極的な仕入れを行い、その能力を向上させる。小売りにとって最も重要な能力が仕入れ能力であることは論をちません。(詳細はp62-p63)

6.書店経営者やチェーン店本部が店頭オペレーション管理を手放す
……書店に働く人は時給が安くても本が好きで本屋で働いています。それにもかかわらず、書店現場では出版社からのリベートや取次からの「提案」が優先されて、書店店頭は本売り場から本置き場になっています。本好きな人を書店に呼び戻すためにも書店店頭を書店員の自由な発想で再構成し、特長ある店舗作りに転換しませんか?

書店の従業員と本を買う客
写真=iStock.com/Maica
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これらのことを実現するため、出版界が行政と連携することが、街の書店を守るための唯一の道です。自浄作用が機能しない出版界には、公正取引委員会や街の書店の将来に大きな関心を持ってくれる経済産業省との連携が欠かせません。特に経済産業省にはバラバラな出版界をまとめていくリード役を心底期待しています。

公取委も含めた行政の指導も不可欠

●行政が街の書店を守るための具体策

7.疲弊している流通側の適正利益確保のために公取委は、取次が出版社と一定の範囲内での利益再配分交渉を行うカルテルを容認する「独禁法の弾力的運用」、もしくは出版社に再販制度の放棄を指導する。(詳細はp32)

8.図書館と地域書店の共存のために地元書店から図書館への納品は定価を厳守させる「再販制度の厳格化運用」に関する公取委の指導。(詳細はp25、p162)

9.出版物流改革の足枷になっている出荷カルテルである「雑誌発売日協定」を公取委が撤廃指導する。

10.書店業に新規参入する際、大きな障壁になっている取次の過剰担保規制を緩和させる。(詳細はp101)

11.再販制度と委託制度の一体運用の弾力化。書店は仕入れた本を出版社に自由に返品できる委託制度があるので、本が書店に移動しても所有権は出版社にあると見なされて、書店は再販制度に縛られ価格決定権がありません。
しかしながら、実際には返品できない本が店頭には多くあって不良在庫化しています。これらの所有権は出版社から書店に移転したとして、再販制商品から外し書店が価格決定権を持つことを公取委が認める。

12.税制面の優遇措置。経産省主導で書籍に限った消費税軽減措置(撤廃措置)を行い上記1で発生する書籍の最終価格上昇を抑制させる。