ビジネス服のカジュアル化で、紳士服大手が業績悪化に苦しんでいる。ライターの南充浩さんは「オーダースーツなど一部で『復調』というジャンルもあるが、大手は軒並みコロナ前の業績に届いていない。紳士服業界は根本的な構造転換を迫られることになりそうだ」という――。
洋服の青山生駒店
洋服の青山生駒店(写真=Tokumeigakarinoaoshima/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

カジュアル化が進んでスーツ業界は大苦戦

今年もまたクールビズの季節が始まりました。2005年にクールビズが導入されてから、この20年間で、夏に限らず通期で男性のビジネスにおける服装は圧倒的にカジュアル化が進みました。さらに、2020年春からのコロナ禍によるリモートワークの普及がさらにカジュアル化に拍車をかけたといえます。

ビジネス時におけるドレスコードは、三十数年前に私が社会人デビューしたころと比べて格段にゆるくなっています。当時男性社員は真夏でもスーツの上着着用でネクタイを締めることが義務付けられていました。

半袖のシャツを着ることは禁止されていませんでしたが、どこの社内にも「本格派」のオジサンが何人かおられて「スーツの下に着るシャツは長袖に限る」という固い信念をお持ちでした。信念をご自身にだけ適応されるのは全く構わないのですが、中にはその信念を他人に押し付けてくる困ったおじさんもおられました。懐かしい話です。

現在、銀行員などの堅い職業でも真夏はジャケット無しの半袖シャツ1枚が普通になっており、あの頃と比べると全く別世界のようです。

そんな中、帝国データバンクが「紳士服に復調兆し」というレポートを公表しました。

レポートによると、コロナ禍で激減したスーツ需要が、冠婚葬祭の再開やオーダースーツ人気の高まりなどで「復調」しているというのです。

これは本当なのでしょうか。