「ジャケパン」「ジャケスラ」スタイルの台頭
コロナ禍が終わり、出社する回数も増えてきてはいますが、純然たる昔ながらのスーツ姿での出社というのは減ったままだと感じられます。筆者は仕事柄百貨店のイベント催事などを手伝ったりするのですが、百貨店の男性社員でもスーツ着用者はあまり見かけなくなりました。
代わりに見かけるようになったのが、ジャケットと異素材のパンツを組み合わせて着用している人たちです。「ジャケパン(ジャケット+パンツ)」や「ジャケスラ(ジャケット+スラックス)」と呼ばれる着こなしです。代表的な着こなしでいうなら、紺色ブレザーとチノパンという組み合わせになりますが、今ではさまざまな色合いのジャケスラ、ジャケパン社員が百貨店内にも増えています。
クールビズ開始後、現在の日本で人口の最大ボリュームを誇る「団塊世代」のリタイアが始まったころからスーツ需要の減少という問題が顕在化し始めました。このころから、大手4社はレディーススーツの拡販に力を入れました。
各紳士服店のレディースコーナーの売り場面積は、20年前と比べて大幅に増加しました。
決算報告書ではレディーススーツの比率は明示されていませんが、各社ともに相当数販売しているはずです。
オーダースーツは売上減を補うほどではない
コロナ禍の在宅ワークを経て、先ほどのアンケートにもあるように現役世代においてもメンズ、レディースともに「スーツ」を買う人と着る人は激減しました。2010年代後半くらいからは既成スーツの減少を低価格パターンオーダーで補おうという試みが業界全体で始まりました。
大手4社だけでなく、低価格オーダースーツ最大規模となったタンゴヤの「グローバルスタイル」のほか、ファブリックトーキョー、オンワード樫山のカシヤマ・ザ・スマートテーラーなどベンチャー企業や小規模チェーン店などの新規参入が話題となりました。
しかしながら、業界最大手のグローバルスタイルですら、年間業績予想は120億円余りにとどまっており、現在は話題性にも成長率にも一服感があります。
結局、減った既製スーツの売り上げを低価格オーダーで何とか補填するのがせいぜいで、既製スーツの落ち込みを補って上回るほどの売上高を記録することは「スーツ」という商材の特性上は不可能でしょう。
オシャレのために着用するという側面はありますが、日本人の多くにとってスーツとはビジネス着でありフォーマル着なのです。さらにいうと、洗濯や保管にも気を使いますから気軽に着倒すというわけにもいきません。ビジネス時のドレスコードは年々緩まってきていますから、わざわざそれを大量に買い込むというのはよほどのマニアしかいないでしょう。