【グループ 他人を尊重できない】マウントタイプ
以前にも増して攻撃を仕掛けてくる
マウンティングとはもともと、動物が別の個体にまたがって、自分の優位を誇示する行動を指していました。近年ではそれが転じて、人間が自慢話やお説教といった言動・態度によって、他人に対する自己の優位性を見せつける行為も指すようになりました。「マウントを取る」といった表現も使われています。困ったことに、マウンティング好きな人種も、さまざまな職場で増殖しているようです。
マウンティングは、病的な精神状態の一種といえるでしょう。精神分析学者のハインツ・コフートによれば、マウンティングのような行動に依存せずにいられないのは、「常に優越感を得られないと、自己愛が満たされず、不安に陥ってしまう心理状態にあるから」で、「劣等感の裏返し」とも分析できるようです。
劣等感を克服するのに自己完結してくれるなら構わないのですが、マウンティングは自己顕示欲のために他人を貶めます。相手の自己愛を傷つける行為を平然と行っている点で、幼稚で自己中心的な問題行動ともいえます。
企業では営業成績や社内コンペの採否の発表といった、社員同士を競わせ、勝ち負けの結果をはっきり示すイベントが少なくありません。マウンティング好きのビジネスパーソンにとっては、大手を振ってマウンティングができる舞台になるわけです。
例えば、営業部門の表彰式で、販売成績トップになったセールスが、2位以下のセールスに、「キミらも頑張ってくれないと、会社が困るんだよね。だから、オレの営業のコツを伝授してあげてもいいよ? オレにはそれでも、トップを守れる自信があるけど」などと、自慢げにマウントを取ってきたら、どう対処すべきでしょうか。
マウンティングをされて不愉快になるのは当然です。だからといって、聞こえよがしに相手の悪口を言ってはいけません。
マウンティングをマウンティングで返すのは、最悪の対処法です。マウンティングを返されたら、自己愛を傷つけられた相手は、以前にも増して、マウンティングの攻撃を仕掛けてくるようになるでしょう。そうなると、お互いにマウンティングをし続ける、不毛な負のスパイラルにはまってしまうおそれがあります。
相手からのマウンティングに対する最善の対処法は「大人の振る舞い」をすること。「キミの営業力にはかなわないな〜」などと、心にもないお世辞でおだてておきましょう。心の中だけで、「雑魚のくせに、大口を叩きやがって」などと、密かに舌を出しておけばいいのです。
本当に優秀なビジネスパーソンであれば、余裕があるのでマウンティングなんてしません。「販売成績トップになれたのは、私だけの力ではありません」などと謙遜したり、周囲の人を立てたりします。その結果、他人の支援をもっと受けられるようになり、販売成績もさらに上がるのです。
ただ、自分以外の部下や同僚がマウンティングに悩まされているようなら、別の対策が必要です。こっそり飲み会を開き、悪口大会で溜飲を下げてみてもいいでしょう。チームのガス抜きも、優秀な組織人なら当たり前にしなければならないことです。(和田)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。