「他責」にしていないか突き詰めて考えてみる

では、どういう基準で「合っている」「合っていない」を判断すべきなのか。

私が「自責・他責問題」と呼んでいる考え方があります。たとえば何か自分を悩ませていることがあるとする。それは、どうしても変えられないことなのか。たとえば創業家が代々にわたり経営を行っている会社で、いま30代のジュニアがいて、次世代を継ぐことが明確にわかっている。そんな会社で「社長になりたい」と思っても絶対無理でしょう。こんなふうにもう与件として絶対に変えられないこともある。

その一方で、「上司がダメだからこの会社はよくならない」というのは、本当に与件なのか。ただ人のせいにしているだけではないのか。変えられる余地があるのならば、自分がどういうふうにすればこの環境を変えることができるのか。本当にすべて考え尽くして、打つべき手を全部打っているかを改めて考えることです。自分でできることがあるのに、それを怠って他責にしていないかどうか。そこを徹底的に突き詰めて考えているかどうかが最後は見極めのポイントになるでしょう。

他責にしている人間は、結局、最後まで逃げ続けてしまうものです。「この業界や会社が悪い」とか、自分に都合のいい言い訳を作って、次から次へと青い鳥を探しに行ってしまう。

会社にいれば何となく平穏に暮らせる時代はもう終わりました。そうなれば個人が自己の価値観で自立するプロフェッショナル性を持たなければいけない。要は、どこに行っても、「自分が職業人としてやり遂げたい仕事はこういうものだ。それとこの会社が合わなくなれば、自分は合うところに行くんだ」という覚悟を持っておかないといけない。そのためにはどこへ行っても通用する、ポータビリティスキルを担保しておく必要があります。

いつ会社を辞めてもいいし、どこへ行ってもやっていける人間を目指す。それこそが究極のダークサイド・スキルかもしれません。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

(構成=長山清子 撮影=大崎えりや)
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