「自分が社長だったら」と思考訓練しておく

「自分が上司(あるいは社長)の立場だったらどうするか」と考えることも重要です。自分の頭のなかの思考訓練ですね。常にそう考える習慣を持つと、「案外、自分が言っていることってちっぽけなことばかりだな」と気づくでしょう。つまり、少し高いところから全体を見渡す訓練をしておく。

50歳で役員になったら全知全能で、何でも好き勝手できると思うかもしれませんが、上に行けば行くほど、いろいろなしがらみも発生します。そんな状況で思い切った決断を下すには、若いころから意思表示をしたり、自分の決断による失敗をリカバリーしたりしておく必要がある。そういう経験をせずに来てしまうと、いざ自分がある程度の地位になったとしても、だいたい何もできないものです。

あとは、社外のネットワークを活用すること。客観的な意見をもらうことも重要ですし、時には会社の人に相談できないこともあるでしょう。それこそ「この会社にいるべきかどうか」とか、「上司を倒したいんだけど、どうしたらいいか」というような話は、社内ではできません。

しかし、いまの会社に新卒で入ってずっとプロパーでやってきた人は、高校・大学時代の友達はいるけれど、同じビジネスリテラシーを持って、コンテキストを理解したうえで相談できる友人がいないことが多い。つまり、リアルかつ有効なアドバイスをしてくれる友人があまりいません。ですから意識的に、社外にネットワークを持っておいたほうがいいでしょう。

仕事というのは、きれいごとだけではすまされません。ダークサイド・スキルを用いても、上司とそりが合わないとか、希望が通らないこともあるでしょう。そんなときは異動を願い出てもいいし、転職を考えるのも一つの手だと思います。プロフェッショナルとして自立した働き手であれば、よい転職先も見つかるでしょう。結局、個人個人がプロフェッショナリズムを持った働き手になることが、ダメ上司問題を解決する一番有効な対策なのです。

上司も部下も、ただ漫然と会社にいるだけでなく、「自分はこの職業人生で何を成し遂げたいのか」「どんなことで世の中に貢献したいのか」「生きてきた証しをどんなふうに残したいのか」を真剣に考えてほしいと思います。新卒の段階では無理だとしても、年齢を重ねるにしたがって、自分なりの働く「大義」や「志」をちゃんと打ち立てておくべきでしょう。自分の「大義」を果たすために、持っておくべきスキルセットがあるなら、それを身に付けるよう努力すればいい。もし自分の大義が会社の目指す方向と合っていないとしたら、そこはもう潔く出て、合っているところに行けばいいのです。