年功序列で搾取され取り返す側に回った?

そもそも、なぜこんな人たちが上司になれてしまうのでしょうか。

年功序列・終身雇用制度の「負の遺産」というのが私の考えです。いまの50代は年功序列・終身雇用制度の時代に入社しました。新卒一括採用で、定年まで終身雇用を約束されたメンバーシップ型の雇用です。この制度下では、若いときは成果を出しても給与に反映されず、「搾取」されます。でも年齢を重ねると、論功行賞的に報酬とポジションをもらえるようになっている。だからダメ上司にしてみれば、ようやく、若いときに搾取されたぶんを取り返す側に回れたということなのです。

そこへ急にゲームのルールが変わったと言われても納得できない。従来のやり方や現在のポジションにしがみつくのも、心情的には理解できます。

しかし実際問題として、ダメ上司の下にいる部下からすればたまったものではありません。そこで上手に使いこなしたいのが「ダークサイド・スキル」。これは組織の成長に不可欠な大きな改革を成し遂げようというときに、反対派をうまく説得し、組織を動かすスキルといってもいいでしょう。

さて、ダークサイド・スキルについて詳しく説明する前に、考えてみてほしいことがあります。それはダメ上司を動かす目的が、組織にとって「本当に正しいことなのかどうか」です。

拙著のなかでは、「煩悩に溺れず、欲に溺れろ」と書いています。つまり「偉くなりたい」「認められたい」「カネがほしい」といった個人的な煩悩を原動力にするのではなく、「職業人として、こういうことを達成したい」「人の役に立ちたい」というような、いい意味での「欲」を原動力にしようということです。

私利私欲によって上司を動かそうとしたところで、おそらくダークサイド・スキルの効果は期待できないでしょう。なぜならダークサイド・スキルの第一は、「味方を作ること」。「この会社をなんとか成長させたい」というような大義がなければ、誰も味方にはなってくれないからです。

「あの上司が嫌いだから仕返しをしたい」というような個人的な理由ではなく、「こうすることが会社にとっても、働くみんなにとっても正しいんだ」という確信が持てたところで、ダークサイドスキルの習得を始めてください。