もしも私が習近平だったら…
最後に、「私が習近平だったらどうするか」という視点で、現在中国が抱える問題の解決策について考えてみよう。
私はこれまでいくつかの国でアドバイザーを務めてきたが、これらの問題は経営コンサルタントである私の立場から見ると、解決はシンプルだ。
まずは中国の現状、つまり経済、内政、外交については、難しい問題ではあるが、次の4つの視点から解決を目指すことが可能だ。1番目は「Business as usual」、2番目は「組織論を駆使する」、3番目は「イデオロギーを転換する」、4番目は「一国二制度から一制度(資本主義)に転換する」である。
1番目は「Business as usual」だ。
これは要するに、共産党が土地を所有していることに対し、私有化も含めて対策を検討していくということである。中国は内政上、さまざまな問題を抱えているといっても、諸外国と比べれば、まだマシな状況だ。
たとえば、アメリカは内部分裂状態で、ウクライナや中東の問題で動きが取れない。また、国民の半分が合成麻薬であるオピオイド中毒で苦しんでいる状況だ。
すべての問題は指導部の人事にある
また、EUも結束を欠いて覇権上の対抗馬にならない。ロシアはウクライナ侵攻でやはり国家分裂状態にあり、CIS諸国が離反する動きもある。グローバルサウスの盟主と言われるインドも、経済や人材、ポテンシャルの面では有望だが、まだ大国として覇権を争う相手ではない。
つまり、中国は焦らなくても、このままでいいのではないか。そう判断できれば、台湾有事も避けられる。台湾有事を引き起こせば、中国は一気に世界を敵に回す。肝いりの一帯一路やアジアインフラ投資銀行から、周辺国は離反することになるだろう。
台湾に対する強硬姿勢も台湾独立機運を高めるだけで中台双方に不利益となるため、緩和して経済・産業を中心に台湾との関係改善を図るべきである。
そして、国内の指導部人事を刷新することである。すべての問題がそこにあるからだ。独裁体制を集団指導体制に戻し、能力や実力のある人材を引き上げる。そして、共青団の若手を政権に復帰させる。
さらに下から叩き上げで実績をあげてきた経営力のある地方の市長や省長、書記たちを登用する。つまり人事改革を急ぐのだ。経営者であれば、人事に手をつけるのが第一であろう。