「人口減少」が日本にとってチャンスである理由

2つ目の追い風は意外かもしれませんが、「日本の人口減少」です。生成AIの進化など、凄まじい勢いでデジタル化が進んでいます。デジタル化による産業革命は、これまでとは質が全く異なり、例えば、自動車自動運転の実用化で、運転手そのものが不要となるように、さまざまな作業が飛躍的に効率化され、長期的には、人間が携わる仕事が劇的に減るからです。

その結果、人口が多い国は、労働力が過剰となり、不利になります。労働力不足に悩む「移民大国」の米国でさえ、移民を増やすことに尻込みしているのは、「人余りの時代」が来るのを見越しているからでしょう。その一方で、日本はデジタル化の活用で、労働力減少の難題をクリアできるかもしれません。人材をクリエイティブな分野に配分し、付加価値を生む労働に集中すれば、生産性を高めることも可能でしょう。

世界中の資本が日本に集まってくる

3つ目の追い風が、私の提唱してきた、「エブリシング・バブル」の崩壊です。過剰な資金が流れ込んだ米国のあらゆるアセットクラス(資産種別)でバブルが発生し、弾けていくというもの。私が見るところ、製薬会社などコロナ関連株を含めて、バブルの7〜8割は、23年までに弾けています。GAFAMやエヌビディアのような「ビッグ・テック」の時価総額も、実力を大きく上回る評価と考えられ、「AIバブル」といえるでしょう。資産価値が下振れするリスクをはらんでいます。

エミン・ユルマズ『エブリシング・バブル 終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025』(プレジデント社)

その一方で、日本株の魅力は今後も高まり、エブリシング・バブル崩壊後の運用資金の受け皿にもなるでしょう。東京証券取引所が利益を溜め込み、再投資しない「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」の上場企業に、改善策の開示と実行を要求したほか、日本企業のROE(自己資本利益率)も、25年末には2ケタに達すると予想されています。割安な「バリュー株」も少なくありません。外国の投資家が日本市場に向かう環境は整いつつあります。

さらに、国内の膨大な金融資産も投資に回るでしょう。投資枠が拡大した「新NISA」も、24年からスタートしました。世界に類を見ない貯蓄率の高さから、「日本人は投資に向いていない」といわれていましたが、それは間違いです。デフレが進めば、現金の価値が上がるので、日本人の経済行動は、極めて合理的だったわけです。

インフレが進んで現金の価値が目減りしていくことに気づけば、日本人は本格的に資産運用に向かうはず。日本銀行の「資金循環統計」によると、日本人の家計部門が保有している金融資産総額は、23年12月末時点で2141兆円であり、株式の占める割合は12.9%、276兆円にすぎず、その割合が20%になれば、152兆円もの資金が新たに株式市場に流入し、株価は大きく上昇するでしょう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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