地政学的要因が日本経済の追い風に

日本経済が50年まで成長し続けられる要因は、日本を取り巻く国際情勢の変化にあります。これまでの向かい風から一転、日本経済には、強い追い風が吹くようになったのです。

1つ目の追い風が「米中新冷戦」です。皆さんもすでにご存じのとおり、米国と中国が世界の覇権を巡って、さまざまな局面で火花を散らし、米中経済摩擦も激化している中で、米国のパートナーである日本の経済的なプレゼンスが、再び大きくなってきたのです。日本の地政学的な条件は今後約30年にわたって日本経済に有利に働くと、私は予測しているのです。

日本は戦後、「米ソ冷戦」を背景とした朝鮮戦争の特需を契機に高度経済成長を遂げました。米国は、日本の共産化を防ぐため、日本復興に注力しました。しかし、1990年に冷戦が終結後、日本は地政学的な重要性を失いました。グローバル資本は、バブル経済で資産が割高になり、成熟した日本市場から資金を一気に引き揚げ、それがバブル崩壊後、日本経済が長期停滞した要因にもなったのです。さらに、80年代後半からの「日米貿易摩擦」に代表されるように、日本を脅威に感じた米国は、「ジャパンバッシング」によって、日本経済の弱体化を図りました。

ところが、アベノミクスが始まり、習近平氏が中国国家主席に就任した2013年から、風向きが変わりました。コロナ禍を契機に欧米諸国と中国の関係は悪化し、実質的な鎖国状態となった中国からグローバル資本だけでなく、サプライチェーンが逃げ出しています。

そして、中国の「代わりになる国」として、インフラや人材が揃っていて製造業が盛んな日本に、グローバル資本が回帰するようになりました。とりわけ、注目されるのが、半導体を巡る動きでしょう。半導体の生産は現在、台湾に集中していますが、「台湾有事」が勃発すれば、生産がストップするリスクが大きいといえます。半導体の特許の大半を握っている米国も危機感を強め、日本に半導体の生産拠点を移すように台湾に働きかけています。台湾のTSMCが熊本に新工場を建設したのも、有事を見越した一種の“疎開”。今後、台湾に代わって日本が再び「世界の半導体工場」になることも、現実味を帯びているのです。

世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、「日本の5大商社株を集めている」と報じられたように、すでにグローバル資本による「日本買い」は始動しています。日本株への投資だけでなく、日本への直接投資(FDI)も活発化するでしょう。オラクルは、10年間で80億ドル(約1.2兆円)以上の投資を日本で行い、データセンターの設備とスタッフを増強します。

インバウンド関連では、シンガポールの不動産投資ファンドも新潟・妙高高原のスキーリゾートに、2000億円超を出資するそうです。日本へのFDIは対GDP比1.1%で、22年には中国を超えました。海外企業が日本で事業投資をすれば、地元の雇用を生み、地域経済も潤います。日本には資金だけでなく、人材も、情報も集まります。移民に関しては賛否両論ありますが、高度な技術やノウハウを持った、外国人材が増える可能性が大きいと見られ、そうしたリソースが、今後の日本経済の発展を支えるでしょう。

【図表】日経平均株価が30万円になる4つの要因