頭の固いバカになるのが一番怖い

おのずと何のために勉強するのかというスタンスも変わりました。

昔は、ほかの学者に負けたくないという気持ちもあって、正解を求めてひたすら勉強していたのですが、いまは、いろいろな答えがあるのを知るため、いろいろな人の考えを受け入れるために勉強しています。

事実、「ただ一つの正しい答え」などあるはずがありません。答えはいくつもあって、時代が変わればまた違う答えが出てくるでしょう。

昔は、バターよりマーガリンのほうが体にいい、と考えられていたように、医学や栄養学の常識はくつがえされることも多いわけです。どんな分野でも、常識が数年もしないうちにひっくり返ったり、まったく新しい考え方が出てきたりするのはめずらしいことではありません。

要するに、どれが正しい答えなのかは半永久的にわからないままなのです。むしろ、答えや選択肢を複数同時に持っていられること、それこそが本当の賢さではないかと思うようになりました。

私は頭の固いバカになるのが一番怖いので、ずっと勉強を続けています。でも、いま、もう一度東大を受けろと言われても合格する自信はありません。若いときのような知能はありませんが、いまのほうが賢いと思っています。

「楽な生き方」を選択するのが幸せな老後につながる道

世の中のほとんどのことは答えは一つではないし、将来、よりよい答えが出てくる可能性もあるのですから、なるべく多様な答えを知っているほうが時代の変化に適応できます。選択肢をいくつか持つことは、人が生きていく上でも重要なポイントだと思います。

高齢になったら、「楽な生き方」を選択するのが幸せな老後につながる道です。

迷ったときは、「楽な道」を選んでください。能天気なくらいがちょうどいい。

和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)

少なくとも意地を張って、「人に頼るべきではない」などと自分に厳しい枷(かせ)を掛けることで、得をすることは何一つない気がします。

「これしかない」と思うより、「こっちがダメなら、あっちがあるか」と考えられるほうが当然、気は楽になるでしょう。

選択肢が多ければ多いほど考え方は柔軟になっていきますし、あれこれ試すうちに自分に合った最適解が見つかる可能性が高まります。

高齢者を数多く見てきた私の経験から、高齢の方はこれまでの人生の中で身につけてきたいろいろな「かくあるべし」を捨てて、もっと楽に生きてほしいのです。

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