なぜ野菜は体にいいのか。国際医療福祉大学病院予防医学センター教授の一石英一郎さんは「活性酸素とは、私たちの体を錆びつかせ、老化させる物質で、その働きを抑える作用が『抗酸化』だ。抗酸化作用を持つ成分は、さまざまな野菜に多量に含まれている」という――。

※本稿は、一石英一郎『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

なぜ野菜を食べるべきなのか

「野菜を食べた方が健康になれる」

そんな言葉は、皆さん誰しもどこかしらで耳にしていらっしゃると思います。野菜の持つ成分についても、「トマトのリコピンがいい」だの、「ナスに含まれるアントシアニンには抗酸化作用がある」だの、野菜を食べることの効用をめぐる言説が巷には飛び交っています。

でも、それが具体的にはどう体にいいのか、なぜ野菜を食べるべきなのか、そこまでわかっている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

「抗酸化作用」ひとつ取っても、それが体に及ぼす効果を正確に理解している人は、それほど多くないのではないかと思います。そして、そこがわかっていないために、野菜を食べることがいかに大事なのかを今ひとつ実感できていない、そんな人も少なくないのではないでしょうか。

実感すれば、野菜を見る目が根本的に変わります。

新鮮なトマトとナス
写真=iStock.com/Edgie
※写真はイメージです

常に健康だった母と私

私の本業は医師です。医師といえば、「医者の不養生」という言葉があるように、激職で食生活も乱れがち、体のどこかを悪くしているというイメージがあるかもしれませんが、私は目下のところ、ありがたいことになんの病気にもかかっておりません。

なぜなのかと考えたときに、真っ先に思い浮かぶのは、生まれ育った神戸の家での食生活です。

私の母親は、「野菜もちゃんと食べなきゃダメ」というのが口癖で、私は幼い頃からそれを繰り返し頭に叩き込まれていました。言われるままに野菜をきちんと摂るようになったのですが、家族全員が母の言いつけを守ったわけではありませんでした。そしてそれこそが、家族の健康に関して明暗を分けたのです。

野菜を嫌って偏食を続けていた家族は、しょっちゅう風邪をひいたり体調を崩したりしていた一方、野菜を好んでたくさん食べていた母や私は常に健康でした。

野菜を食べるか食べないかで、それほどまでに如実な違いが現れるのです。

それを間近に、つぶさに見ていた私は、野菜を食べることこそが健康の秘訣なのだと自然に了解するようになりました。