現場にはできるだけ足を運び、「どう?」と声をかけ、世間話をすることも。入行以来、ずっと営業畑で手腕を発揮してきた小河だが、バリバリのキャリアウーマンというイメージよりは、物腰やわらかく、それでいてさばけた女性に見受けられる。共感を得られたのは、その親しみやすさにも理由があるのだろう。
ただし、実際に小河がマネジメントするのは、派遣の女性たちではなく、彼女たちを統括する男性行員だ。受電部門は、預金、投信、住宅ローンなど内容ごとに担当スタッフが分けられ、それぞれにチームのリーダーとなる管理職が責任者としてついているのである。その人数はおよそ30名。
管理職の多くはコールセンターの在籍期間が長く、知識も経験も豊富だ。新人スタッフのフォローやクレームの対応などもこなし、手強い質問が入れば、すかさずモニタリングをして答え方の指導をする。そんな百戦錬磨のリーダーたちが小河の直属の部下になったのである。
支店の場合は、いわゆるプレーイングマネジャーとして一緒に仕事を進める中でマネジメントを行えるが、ここでは本当の意味でのマネジメントに集中しなくてはならない。そのため、当初は戸惑うことも多かったという。
しかも、チームの責任者はそれぞれにノウハウを持っている。非常に頼もしい半面、時には上司として、軌道修正を促さないといけないこともある。
そんなときはどうするか。もちろん、話し合いの場は持つが、意見が一致しないケースもありうる。その場合は、まずは相手が考える方法でやってみてもらう。その後、コミュニケーターの反応を見るなり、周りの声を聞くなりして、問題点の気づきを促すのだ。それが問題の根治に最善の策なのだと小河は考えている。
「どんなに長時間話し合ったうえで出した結論でも、本人が納得していないと根本的な修正はできないんですね。その場は言われたとおりに修正したとしても、また違う場所で似たような問題が起こったときに、応用ができないんです」