ボーナスカットはもちろん、賃下げも珍しくない不況のどん底。ならば稼ぎ手を増やしてはどうか。そう、家には専業主婦という潜在労働力がある。このまま埋もれさせては“不良債権”だが、パートに出てもらえば、家計の戦力に変身だ。

内閣府の『平成20年版男女共同参画白書』によれば、1990年代後半からは共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転し、2007年には専業主婦世帯が851万世帯、共働き世帯は1013万世帯と差が開き続けている。つまり、共働きが当たり前の時代になったのだ。

仕事ぶりを認め、褒めて、愚痴を聞く

東京郊外に暮らす岡村幸子さん(仮名・31歳)は結婚7年目。5歳と7歳の子供がいる。会社員の夫は手取り24万円。結婚3年目に「幼稚園を3年保育にするのも習い事に行かせるのも私の希望だったので」自宅近くにある外食チェーンでホール係のパートを始めた。

1週間のうち平日2日は夫の帰宅後の夜9時から深夜0時まで、土日のどちらかに朝9時から午後3時まで働き月に4万円。その後、出勤日を増やして6万~7万円に。ただし、これ以上は難しいという。「(パートの非課税所得限度額の)“103万円の壁”は超えたくないし、出勤日が多いと、子供が熱を出したときに急に仕事を休めなくなるので」。

パートの日は、「主人が昼ご飯作りや子供の上履き洗い、食器洗いをしてくれて助かりますね」。夫婦ゲンカで「おまえはそれだけしか稼いでいないのに」と言われたこともあったが、「でも、私がいないと無理だよね」と反撃する余裕も生まれた。「パートに出るようになってから、主人に言えることは大きくなったかもしれないですね」と笑う。

専業主婦であることの“重苦しさ”を感じている女性もいる。川村理恵さん(仮名・35歳)は外資系企業勤務の夫(45歳)と東京郊外の戸建て住宅に、8歳と3歳の子供2人と暮らす。夫の年収は1000万円だが「主人は、毎年リストラに怯えていて、今の会社に50歳までいられないと覚悟しています」。

川村さんは8年前の結婚後、「自分のお小遣いが欲しくて」散発的にコンビニやポスティングの短期バイトをしていたが、最近、得意のピアノを生かして子供向け音楽教室のパート講師を始めた。「準備に手間がかかるので時給換算すると安いですよ。でも自分の能力を生かしたかったので」。週末の昼に1コマ受け持って月2万円。家族旅行の資金だ。

「本当は月8万円くらい稼ぎたい。今の主婦って家事は手を抜いているので時間はあるんですが、子供が病気になったら私がついているしかない。それを考えるとフルに働けません」。夫の気遣いで一番うれしいのは、「精神的な支えや声と、ただの専業主婦じゃないことを認めてほしい。専業って立場は重苦しいですよ。でも103万円の壁を超える気はない。自分で年金を払わずに済みますし」。