トレンドを提案しつつ
「安さ」をブランドにする
私自身が「口ベタ」なので、偉そうなことは言えない。しまむらという会社もメディアへの露出を控えめにしてきたので、あるいは口ベタ企業だったと言えるかもしれない。だが、いま「ブランド化」をテーマに、口ベタ脱出を図っている。
私は、新卒から26年間ずっと、しまむらで働いてきた。振り返ると、世の中が10年区切りで動くのに合わせて、しまむらも進化を遂げてきた。
戦後のモノのない時代から1980年代までは、商品が豊富に揃っていることに価値があった。私が入社した当時は、店舗内に商品が邪魔なほど溢れていた。ところが次第に「安いだけ」では通用しなくなった。品質が伴わなければ、いくら安くても売れないのだ。そこで、「安くて、品質のいいものがありますよ」が店の基本になった。
90年代に入ると、品質だけではなく流行に乗った商品が求められるようになった。しかし、トレンドを追い求めると、読みが外れたときのリスクが大きい。90年代初めは、他店の店頭で売れている商品を調査して、2、3カ月後には店頭に並べるようにした。流れがゆっくりしていたので、たとえ半歩か一歩遅れることになっても、十分に商売になった。
2000年代に入ると、半歩の遅れでは売れなくなってしまった。トレンドのサイクルが非常に短くなる一方で、しまむらの店舗数は1000店を超えるようになり、2、3カ月の遅れでは新商品を投入できなくなった。こうなると、もはや流行の一番先頭を走る以外にない。情報収集力をつけ、極力当たり外れのリスクを回避するようにしよう──。これが00年代、最初の10年の方針だった。