チラシのキャッチコピーも「散歩がてらにお気楽に」から「トレンドを提案する」しまむらに変更。毎年、年に4~6回商品部の社員をパリ、ロンドン、ミラノ、中国といった最先端のマーケットに派遣し、最新のファッション情報をいち早く収集することに努めた。その結果、「案外、最新のファッションが揃っている」という声を、お客様からいただけるようになった。また、我々も、商品のラインアップにある程度の自信がもてるようになった。
この自信が、口ベタ企業からの脱出の背景にある。これからの10年、しまむらは「ブランド化」に取り組んでいくつもりだ。
ブランド化などと言うと、「らしくない」と思われるかもしれないが、むろんシャネルやグッチのような高級ブランドになろうというわけではない。
私の考えるブランド化とは、「お客様に明確なイメージをもってもらえる」ということだ。たとえば、トヨタ自動車の「カローラ」には、多くの人が「燃費がよくて、価格が安い」といったイメージをもっているだろう。これこそブランドだ。カローラと聞いて、「自動車だよね」という答えが返ってくるようではダメ。しまむらと聞いて、「衣料品店だよね」という答えが戻ってくるようではダメなのである。
では、しまむらがブランドになるための絶対的な必要条件とは何か。それは、「安さ」だ。つまり、「しまむら安心価格」が大前提。しまむらは20年以上前から、いわゆる消し札(値下げ札)を一切使わずに、「この品質でこの値段だったら、絶対に安いと感じてもらえる」という値付けをしてきた。いくら高品質でも、価格が高ければ、しまむらの存在価値はなくなってしまうだろう。
素材・機能・品質、それにトレンドの面で十分満足いただけるレベルにあり、そのうえで、「にもかかわらず、圧倒的に安い」という形容詞がつくことこそ、しまむらが目指すべきブランドの中身なのである。