「分配論」ではダメ!対話が最適解を導く

10年4月1日、当社は相互会社から株式会社に組織形態を変更し、東証1部に株式を上場しました。順調な船出となりましたが、今日に至るまでにはさまざまな障害を乗り越えなければならず、そこにはいい意味での「摩擦」が生じました。

第一生命 社長
渡邉光一郎

1953年、静岡県生まれ。東北大学経済学部卒業。調査部長、企画第一部長、取締役、常務、専務などを経て、10年4月より現職。「企画管理部門が長く、歴代社長の経営を見てきました。いいところをうまくとりいれていきたい」。

その1つはお客さまとの「摩擦」です。

当社は、約820万人の保険契約者という大切なお客さまに支えられています。株式会社化・上場にあたって、多くのお客さまに株主になっていただきました。一定の基準に基づき株式を割り当てられた方は約738万人。1株未満の場合は現金で、1株以上を割り当てられた方でも、希望すれば株式の代わりに現金を受け取れるようにしました。それでも、何も受け取ることのできないお客さまも出てきてしまいます。こうしたことは、約820万人のお客さまとの対話を通じて、丁寧にご説明してきました。

また今後は、契約者配当のほかに株主配当があり、契約者配当と株主配当のバランスにもご理解いただく必要があります。単に利益の分配論で考えると、誰もが納得できる「解」を見つけるのは至難の業といっていいでしょう。

当社は1902年の創業以来、「お客さま第一主義」を経営理念として貫いてきました。また、創業105周年にあたる2007年に発表した「品質保証新宣言」でも、「お客さま第一主義」を最初に掲げ、対外的に改めて約束をしました。

この約束を将来にわたって履行するにはどうすればいいか。国内はむろん、ベトナムやインドなど、特にアジアやオセアニアでの展開を含めた成長戦略を打ち出し、これを着実に実行し、企業価値を向上させる。この取り組みに尽きます。