それがひいてはお客さまにご満足いただける商品やサービスの充実に結びつく。株式会社化は、その手段にすぎないのです。このこともお客さまへご説明してきました。弁証法的な解決策をとる、つまり持続的に成長していくことでこそ納得できる「解」を導きだすことができると考えています。

また株式会社化・上場するにあたり、金融庁や東証、金融機関などの関係先に対して、さまざまな手続きやシステム的な対応のすり合わせをしなければなりませんでした。これもいい意味での「摩擦」であったと思います。

例えば、株式の交付です。当社ほどの規模では実現不可能ではないかと指摘する関係者もいたほどです。当社1社で100万単位の株主が誕生することになり、株式の売買に支障をきたす懸念もありました。幸いなことに、先行して株券の電子化(ペーパーレス化)があり、10年1月には、東証が最新の売買システムを稼働させました。結果として、絶妙のタイミングで上場することができたのです。

今回、株式の割り当てに関して総額約1兆円の振り込みをしていますが、金融機関に対しても大きな負担をかけました。

金融機関が1日に処理できる振り込みには一定の限界があり、そこに当社のお客さまの700万口座への振り込みが加わる。金融機関の方には「通常の処理を超えており、慎重に準備を進めないと大変なことになります」と警告されました。彼らに対しても、私たちのこれからの取り組みを伝え、その熱意を理解してもらおうと努めました。関係先の方たちのご理解やご協力を得て、新たな仕組みをつくることで、こうした問題もどうにかクリアさせました。

3つ目は職員との「摩擦」です。

約820万のお客さまとは、いろいろなやりとりが必要です。膨大なお客さまの情報を整理し、専用の事務センターが書類を送り、コールセンターが連絡を受ける。そして、営業職員が総がかりで、お客さま1人1人とのコミュニケーションを密にすることが求められました。

株式会社化に無関係という部署はありません。その意味では、職員には大きな負担だったと思いますが、彼らの総力を挙げてこの一大事業にあたってきました。