社員旅行、閉店19時……「社員にとっていい会社」

しまむらは時代の変化に適応しながら、成長を続けることができた。だが、この間、決して特殊なことをやってきたわけではない。私の入社当時から経営陣が標榜してきたことは、ただひとつ。「社員にとっていい会社にしよう」ということだけである。

社員にとっていい会社なら、それはお店に表れて、お客様にもいい会社になるだろう。そうすれば売り上げが上がって、株主にもいい会社になるだろう。こうした、極めてシンプルな考え方でやってきた。取引先に対しても同じで、コスト削減の努力をサプライヤーだけに押しつけることは絶対にしない。サプライチェーン全体の中でコストを下げる工夫を相互に出し合ってきたからこそ、他店の半値以下という圧倒的な価格を、継続して提供してこられたのだ。

社員にとっていい会社であるために、しまむらは自由と公平を大切にしている。パート社員を含めて約1万4000人の社員からは、毎月4000件を超える改善提案がある。雇用形態にかかわらず、あらゆる社員が、自由な発想で提案できる風土がある。

07年6月に高田馬場へ初めての都市型店舗を出店した際、予想を超える来店があった。現場ではレジ係のパート社員から、「社長、小型のレジがあれば、あと一台置けますよ」と言われた。すぐに新型レジ台の開発を指示して、1カ月で導入にこぎ着けた。うちの会社は、こうした現場の活力に支えられている。

また、店長の約7割はパート出身の「主婦」だ。地域で最も優秀な人材を活用できるように、閉店時間を19時として、主婦でも働きやすい環境を整えてきた。店長に発注権限がないのも、働きやすさにつながっている。店長が負う責任は売り上げと労務管理のみ。商品発注と在庫のコントロールは、すべて本部で行うため、店長であっても他の社員と一緒に19時15分には店を出られる。

新年会と社員旅行も重要な行事だ。新年会・社員旅行には全社員の90%以上が参加する。費用は会社持ちで、参加は任意。主婦業と両立している社員にとっては、気兼ねなく出かけられるいい機会になっていると思う。ただし、いずれも食事がまずいと参加者が減る。女性の目はシビアだ。総務部は社員の心を掴もうと、毎回必死に企画を練っている。評価の主体はあくまでもユーザーである社員。公平な評価はあくまでもユーザーによって下されるものだ。

ブランド化において最も大切なのは、お客様にどう見てもらえるか。それには、自分たちの一番の強みを、最もわかりやすい形でお客様に伝える必要がある。

だから、私の言葉よりも、しまむらの店舗を見てもらうのが一番いい。「結構いい商品を、すごく安く売っているな」と思っていただけるはずだ。

※すべて雑誌掲載当時

(山田清機=構成 大沢尚芳=撮影)
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