家が買えない若年層の根強い不満

その景気であるが、今年1~3月期には実質GDP成長率が前年同期比+3.4%まで回復、6四半期ぶりに3%を超え、復調しつつある。

ただ、そのけん引役は半導体サイクルの底入れを受けて急回復している輸出であり、個人消費や設備投資といった国内需要の足取りは未だ緩慢である。なかでも、国民の経済活動そのものであり、その意味で世論に直結している個人消費は、1~3月期においても前年同期比+1.1%と小幅な伸びにとどまっている。

消費の回復が遅れている原因は、第一に物価の上昇が収まらないことである。消費者物価上昇率は昨年半ばに前年比3%前後まで鈍化したものの、以降は下げ渋っている。そうした中で、基本給(所定内給与)の伸びは前年比3%を若干上回る程度で伸び悩んでいるため、物価上昇分を除いた実質賃金はほとんど増えておらず、消費者の景況感は冴えない状況が続いている。

若年層の不満はより強い。失業率は全体では3%を下回り比較的低い水準にあるが、20代に限れば6%前後で高止まりしている。政策金利の引き上げもあり住宅価格の高騰には歯止めが掛かったものの、その水準は依然高く、一方で金利の上昇は返済負担の増加にもつながるため、かえって住宅を持てないという若者の不満を高めている面もある。

写真=iStock.com/pius99
※写真はイメージです

4月の総選挙で惨敗、ねじれ国会で内政に手詰まり感

これら景気に対する不満の原因の多くは、何も今に始まったことではない。にもかかわらず、これまで効果的な対応策を打ち出せていないのは、尹大統領の与党「国民の力」が議会の過半数を持たない、いわゆる「ねじれ」の状態が続いている影響が大きい。

韓国の議会は一院制で定数300、任期は4年。与党の議席数は、今年4月10日に行われた議会選挙前で114、「共に民主党」の156議席を大きく下回っていた。尹大統領は今回の議会選挙で勢力拡大を目指したものの、結果は選挙前を下回る108議席しか確保できなかった(図表2)。大統領が弾劾訴追される可能のある100議席割れとはならなかったものの、惨敗と言える結果に終わった。

尹政権は年金・教育・労働を改革の3本柱に据え、国民の不満の解消や経済の活性化を目指してはいる。しかしながら、議会で過半数を持たないため立法措置は難航、大統領令のみでの対応を強いられているため、十分な成果が挙げられず支持率の回復につながっていない。