韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の支持率が21%となり、過去最低を更新した。これからの日韓関係はどうなるのか。伊藤忠総研チーフエコノミストの武田淳さんは「支持率が低迷すると反日を政治利用する政権が多かったが、尹大統領は歴代政権とは違う」という――。
2024年5月27日、韓国・ソウルで開催された韓中日首脳会談の傍ら、共同記者会見に臨む日本の岸田文雄首相(右)と握手する韓国の尹錫悦大統領(左)。
写真=EPA/時事通信フォト
2024年5月27日、韓国・ソウルで開催された韓中日首脳会談の傍ら、共同記者会見に臨む日本の岸田文雄首相(右)と握手する韓国の尹錫悦大統領(左)。

日韓とも政権支持率が過去最低を更新

6月上旬に実施されたNHKの世論調査で岸田内閣の支持率が21%と政権発足以来の最低を記録したが、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の支持率も負けず劣らずの低迷ぶりである。調査会社の韓国ギャラップが5月31日に発表した尹大統領の支持率は、奇しくも岸田内閣と同じ21%に低下し、就任後の最低を更新した。

尹大統領を支持しない理由のトップは「経済・暮らし・物価」、つまり経済情勢の悪さで、回答者の15%が挙げた。そのほか、上位には「コミュニケーション不足」(9%)、「独断的・一方的」(6%)といった大統領個人の姿勢やキャラクターの問題も挙げられた。実際に尹大統領は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の与党であり、現在の最大野党である「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表と就任以来、会談をしていなかった。

また、元検察トップで政治家の経験がなかったこともあり、受け答えが横柄で人の意見を聞かず印象が悪いという指摘をよく聞く。4月の議会選挙では、与党候補のうち選挙ポスターに尹大統領の写真を使わなかった候補が7割にも上るという報道もあるほど、党内でも人気がない。

物価高、景気悪化に有効な策を打てなかった

不支持の最大の理由である経済情勢についても、2022年5月に尹大統領が就任した直後の6月、消費者物価上昇率が前年比で6%まで上昇、10~12月期には実質GDP成長率がコロナ前の平均的なペースだった3%を割り込んで低下するなど、景気が悪化した(図表1)。

物価の上昇は、日本と同様、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギーや穀物の国際価格高騰によるところが大きく、尹政権の責任ではないが、影響緩和や景気回復につながる有効な策を打ち出せなかったことが支持率の低下につながったと言えるだろう。

【図表】韓国の成長率とインフレ率