文在寅氏の元側近は、竹島上陸でアピール
今後は、日韓関係への影響も懸念される。選挙の敗北を受けて議会での尹政権に対する批判が強まり、尹大統領が改善を進める日韓関係に対してもネガティブな動きが増える恐れがある。
それが世論に波及すれば、インバウンドや日本製品の販売に悪影響が出る可能性もあろう。今のところは、訪日韓国人数が4月も66.1万人と台湾や中国本土を上回る最多を維持、今年1月から4月までの累計でも全体1160万人中300万人、実に訪日外国人4人に1人が韓国人という状況にあり、影響は見られない。
しかしながら、日韓関係に悪影響を与えかねない動きも出始めている。野党第2党「祖国革新党」、といっても議席数わずか12であるが、その代表を務める曺国(チョ・グク)氏が5月13日、島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸し、尹政権の対日政策を批判した。
この曺氏は、文在寅前大統領の側近とされ、元法務大臣ながら子供の不正入学などの罪で昨年2月に実刑判決を受け、現在、控訴中である。玉ねぎの皮のように疑惑が次々と出たことから「タマネギ男」と称され、今回の行動も自身の拠り所を求めるものであろうが、現状に不満を持つ一部の層の支持を得たことも事実である。今後の議会の情勢や野党の言動とその影響には留意が必要であろう。
反日を利用せず、日米協調路線を継続
内政面で大きな制約と逆風を受ける尹政権であるが、外交は大統領の権限でできる範囲が広いため、その方向性に大きな変化はない。
今年5月27日には日本から岸田首相、中国から李強首相を招き、4年半ぶりとなる日中韓首脳会談をホスト国としてソウルで開催、朝鮮半島の政治的解決に向けて積極的な努力を続けることに合意したほか、日中韓FTAの交渉を再開すること、3カ国での首脳会談および外相会談を定期的に開催することも決めた。
この日中韓首脳会談は、当初、ホスト国交代のタイミングを意識し、昨年中の開催を目指していた。その点を突いて中国は、開催時期についての協力と引き換えに自国に有利な合意内容へ誘導しようとしたようであるが、韓国側はそれに乗らず、時期を遅らせてでも内容にこだわった。
その結果、共同宣言に「国連憲章の目的および原則、並びに法の支配および国際法に基づく国際秩序に対する我々のコミットメントを再確認した」と盛り込み、中国の国際秩序に対する挑戦的な行動を形式上とはいえ牽制することもできた。
上述の北朝鮮問題への対応やFTAを含めた3カ国での協議の場の継続を含め、今回の会合は東アジア地域の安定と経済発展に一定の成果があったと評価できよう。