外交問題が成果を示しやすい数少ないテーマ
尹外交の基本である米国との協調路線は揺らいでいない。7月には、2回目となる日米韓首脳会談がワシントンで予定されており、北朝鮮を睨んだ日米韓の防衛体制強化や情報共有の円滑化、サイバーセキュリティーでの連携拡大のほか、中国を意識したサプライチェーン構築などの経済安全保障についても話し合われる見通しである。米国は中国との対峙において日韓の協力を求めており、尹大統領は日本と連携して、そうした役割期待に応えようとしているように見える。
米中の対立が厳しさを増す中で、ともすると日韓の分断を図り自国に有利な形で事を進めようとする可能性を排除できない両国に対して、日韓連携して向き合うことは一つの理に適った選択肢であろう。互いに内政問題では支持率の改善がままならない日韓首脳にとって、外交問題が成果を示しやすい数少ないテーマであることは共通している。
経済面では協力・共存関係ができている
経済面においても、そもそも日韓は相互補完関係にある。2023年の米中を含めた両国の貿易関係を見ると(図表3)、日本は中国に対し473億ドルもの貿易赤字だったが、韓国に対しては187億ドルの黒字であった。
一方の韓国は、その裏返しで日本に対して赤字となるが、中国に対しては53億ドルの黒字であった。これは、韓国が日本から生産用の機械や原材料を輸入し、中国へ半導体などの製品を輸出するという貿易構造を反映している。韓国の対中黒字は、この数年で大きく減少してはいるが、かつてはこうした関係がより明確であった。
また、韓国は同様の構図で米国から444億ドルもの黒字を稼いでいる。そして日本も、中国に対する赤字の一部を韓国からの黒字で補っている。すなわち、素材や製造用機械に高い競争力を持つ日本と最終製品の販売を得意とする韓国とは、貿易を通じて協力・共存しているわけである。
そのほか、エネルギー確保や少子高齢化は日韓共通の課題である。今回の日中韓首脳会談に合わせて行われた日韓首脳会談は、水素・アンモニア・量子分野に加えて、脱炭素や重要鉱物分野での協力を加速させることなどで一致した。このように、両国の間で協調できる部分は多いため、仮に選挙の結果を受けて議会で逆風が強まったとしても、産業界においては日韓の協力関係が続くと考えて良いだろう。