結局は「言った、言わない」、日本テレビと小学館の水掛け論

両社の報告書で多くのページを割かれているのは、日本テレビが小学館にオファーする形で漫画のドラマ化が決定し、両社がコンタクトを取り始めるところから、揉めに揉めた制作プロセスを経て、第9話、第10話(最終回)では脚本家が降板(事実上更迭)、原作者みずから台本を書くという異例の事態となり、それでもなんとか最終回放送にこぎつけたところまでの経緯である。

まず、原作者とその代理人として日本テレビとの交渉に当たった小学館の編集者は、「原作に忠実に」ドラマを作るように求めたが、詳細な契約書は交わしておらず、どこまでが「忠実」で、どこまでが原作者にとっては受け入れられない「改変」に当たるのか、両者は最初からコンセンサスが取れていなかった。日本テレビの報告書には、ドラマ化決定時の打ち合わせ(2023年3月9日)の記録として、こうある(※は筆者註)

なお、当調査チームへのC氏(※小学館編集者)からの書面回答によると、本件原作者(※芦原氏)は、過去作では製作(原文ママ)途中で「やっぱりやめたい」と言い出したこと、小学館からはドラマ化するならば原作を大事にしてくれる脚本家の方でないと難しいことを伝えたと述べているが、(※日本テレビのプロデューサー)A氏、B氏はこの時点では条件や注意事項として聞いた記憶がないと述べている。

その後の振り返りにもこう記してある。

芦原氏が、ドラマ放送終了後、2024年1月26日にブログに書いたように「必ず漫画に忠実に」「漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様『原作者があらすじからセリフまで』用意する」という条件は小学館からは口頭あるいは文書で提示されていなかった。

互いの条件を明文化しないまま、やりとりが進んだ

小学館と芦原氏は「ドラマ制作上やむをえないこと以外は、原作から変えない」と思っており、日本テレビと脚本家は「ある程度アレンジしなければドラマとして成立しない」と思っていた。そんなお互いの条件をクリアに明文化しないまま、台本の準備稿のやり取りをしていたので信頼関係が築けず、1話ごとの決定稿に至るまでに、意訳すると「原作に忠実に直せ」「直せない」「直せないなら原作を引き上げる」「やはり直す」という不毛な交渉が何度も繰り返されている。

日テレは5月末、報告書をリリースした(写真=othree/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

Eメールなどデータとして残っているやりとりも記されているが、トラブルになってしまった原因は、結局のところ「言った、言わない」に尽きる。記録に残らない電話や対面、オンライン会議でのやりとりも多かった。

芦原氏は脚本家とは一度も直接話してはいない。それは芦原氏の「脚本家と会ってしまうと、言いたいことが言えなくなる」という判断からだったようだ。これには日本テレビの報告書にも、他の脚本家やプロデューサーから「会って信頼関係を築いたほうがいい」という意見が複数寄せられており、賛否が分かれるところだ。