漫画『セクシー田中さん』(小学館)の作者である芦原妃名子さんの死から4カ月、小学館とドラマ版「セクシー田中さん」を制作した日本テレビによる調査報告書が公開された。テレビの取材を続けてきたライターの村瀬まりもさんは「報告書を読むと、原作者が脚本家への不信感を募らせ、『脚本家の書くものが耐え難い』とまで言っていたことがわかった。ただ、そんな事態を引き起こした責任はテレビ局と版元にある」という――。

漫画家・芦原妃名子氏の死でテレビ業界は変わるのか

漫画『セクシー田中さん』の作者・芦原妃名子氏の死は、テレビ業界を変えようとしている。いや、変えなければおかしい。原作者死亡という最悪の事態が起こって初めて、これまではあいまいなまま常態化し、いわば「なぁなぁ」でやってきた漫画原作ドラマの制作過程における諸問題が、きちんとした文書で白日の下にさらされた。

画像=ドラマ「セクシー田中さん」公式サイトより
画像=ドラマ「セクシー田中さん」公式サイトより

2024年1月29日、漫画『セクシー田中さん』(小学館)の作者である芦原妃名子さんが死去。前年10月から12月にかけて放送された連続ドラマ版「セクシー田中さん」(日本テレビ)の制作過程において、芦原さん側と制作スタッフの間でトラブルがあったことがその一因とされ、5月31日に日本テレビは「社内特別調査チーム」による調査報告書を公表。続けて6月3日に、原作の版元である小学館が「特別調査委員会」による調査報告書を公開したのだ。

報告書を読み解く3つのポイント

日本テレビ、小学館とも、それぞれ90ページ前後にもわたる報告書で、もちろん調査は合同ではなくそれぞれ独自に、弁護士を交えて行われた。そこには、テレビ、出版のみならず、エンターテインメント業界に携わる人間なら読んでおくべき教訓と提言が満載なのだが、業界の構造的な問題についてはいったん置いておいて、まずビジネス上発生した「人間関係のもつれ」として読み解いてみた。出版社側のスタッフとしてテレビドラマの現場を取材している筆者が着目したポイントは、以下の3つだ。

・結局は「言った、言わない」、日本テレビと小学館の水掛け論
・漫画家と脚本家、女性クリエイター同士の確執に読めてしまう悲しさ
・この悲劇には第一幕と第二幕があり、第二幕がなければ最悪の顚末てんまつにはならなかった