巨額を投じた少子化対策は奏功せず

いままで政府が使った少子化関連予算は、各メディアによって差はありますが、概ね「10年間で300兆ウォン以上」。多くのメディアが、危機感よりは虚しさに近い論調の記事を出しています。

そのなかでも特に2023年10月~12月期、ついに出生率が0.65人まで下がったことに、多くの記事が注目しています。普通、期間別に3カ月単位でデータが発表されますがそこに0.6人台の数字が出たのは初めてです。2023年1~3月期が0.82人、4~6月期が0.71人、7~9月期が0.71人、そして10~12月期が0.65人。ちなみに2022年10月~12月期は、ギリギリで0.7人でした。

韓国では、1~3月の出生率がもっとも高く、それから低くなるのが一般的ですが、それでもついに0.6人台になったのかと、国内外の専門家たちが言葉を失いました。ちなみに、赤ちゃんをできる限り1月に産もうとしているのは、少しでも早く生んだほうが、小学校でよい成績を得る可能性が高くなるためです。

「お金がないから」だけが原因ではない

また、この少子化に関しては、進行スピードも速すぎます。出生率が0人台になったのが2018年からです。2017年に1.05人、2018年に0.98人、2019年0.92人、2020年0.84人、2021年0.81人、2022年0.78人、2023年0.72人。2023年の出生児は23万人で、前年に比べて8%も減少しました。

シンシアリー『Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち』(扶桑社)

少子化関連のどの記事を読んでみても、「さらなる対策が必要だ」としているものの、詳しくどこをどうすればいいのかについての言及はなにもありません。経済的なことや住居費の問題など、いつもの話だけが繰り返されています。もちろん、そうした点がもっとも大きな要因だとは思いますが、本当に「お金がないから」だけでここまで出生率が下がるのでしょうか。そこは疑問です。

他にも男女嫌悪、簡単に言うと男が女を、女が男を必要以上に敵視し合うという話も出ていますが、出生率と男女嫌悪の関係性については、前著『韓国の絶望 日本の希望』(扶桑社新書)で海外専門家の見解などを交えながら結構長く書いておりますので、興味をお持ちの方はそちらをお勧めいたします。

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