専門家たちが驚く「異常」な低出生率

そこまで考えを広げてみると、「世の中が悪い」「よくわからないけど誰かが悪い」と攻撃的になるよりは、“時が来るまで”子供を産まないという選択は、まだ肯定的に評価できるかもしれません。

しかし、引用部分で教授も発言していますが、いつまで待ってもそんな「完璧」など来るはずもなく、結果的に(生まれること自体を含めた)子供の可能性を封じてしまっていると思うと、やはり書いていて愉快な話ではありません。

関連した内容として、韓国の少子化問題の(本稿執筆中の時点での)最新データを紹介します。日本だけでなく、いくつかの国で出生率(以下、合計特殊出生率)が問題になっています。

出生率が2人を超えないと人口を維持できないといった話もありますが、もはやそこまで考える余裕もないでしょう。移民を積極的に受け入れているアメリカすらも、すでに1人台が定着しています。

特に韓国の出生率は、高いか低いかを論ずる前に、ひと言で言って「異常」です。世界的に「研究課題」とされており、各国の専門家たちが「戦争、またはそれに準ずる命の脅威に晒されているわけでもないのに、なぜこんなにも出生率が低いのか」と口を揃えています。

ソウル特別市の出生率はなんと0.55人

専門家ではありませんが、ちょうど本稿を書いていた3月、米国の次期副大統領候補とされるJ・D・ヴァンス議員が、1.66と予想されるアメリカの出生率において、「このままだと韓国のようになる」と話したりしました。もはや韓国は少子化問題の代表格だと見てもいいでしょう。

その韓国の2023年出生率は、0.72人でした。2024年2月、政府の公式発表による数値です。民間の予想では、一部0.7まで下がるのではないかという話もありましたから、これでもほっとしたという声も聞こえます。

首都のソウル特別市の場合はなんと0.55人。盧武鉉政権のときから首都機能の一部移転が行われた「セジョン市(特別自治市として独立した自治体扱い)」以外は、すべての自治体が1.0人未満でした。2024年は0.68人と予想されており、すでに2023年10月~12月期は、全国平均0.65人にまで下がっています。

出生率低下のコンセプト
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