韓国では20~30代の人たちは「2030」と呼ばれている。韓国生まれの作家シンシアリーさんは「彼らは投資が好きという共通点がある。その背景には『どれだけ頑張っても不公正な結果にしかならない』という考えがある」という――。

※本稿は、シンシアリー『Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

最重要キーワードは「自分中心」

彼ら2030は、どんな価値観を持っているのでしょうか。どんなアイデンティティを持っているのか、と書いたほうがいいでしょうか。自己同一性、アイデンティティ――なにを求めて、どんなスタンスで世界を、自分を見ているのか。なにかの分析を始めるなら、ここからでしょう。

いつものことですが、私の見解は韓国人の韓国論としては図抜けて変わり種ですので、ひとまず措いておきつつ、まずは韓国内で一般的に出てくる見解をいくつか紹介します。

まず「その1」に、「個人主義である」こと。他の国でも、若い世代に関して前の世代の人たちがなにかを分析するとき、ほぼ例外なく「個人主義が強い」とします。韓国も例外ではありません。論文や記事など多くの見解をまとめてみても、もっとも共通して語られるのが、「2030においてもっとも重要なキーワードは『自分中心』である」です。

2030の共通の話題は「旅行と投資」

「自分を重視する個人主義傾向」、「社会や職場より自分を優先」などで表現されます。お金を使うにも、「自分向け」のものにこだわります。「面白さの追求」と表現されることもあります。

しかし、日本のようにいわゆるオタク文化が発展しているわけでもないし、学校生活も韓国では“絶対的な入試中心”になるので、部活などの経験もほとんどありません。多様ななにかを求めてはいるけど、家に引きこもってネットをやる以外には、有形無形の「インフラ」が足りないとでも言いましょうか。

その影響か、時間をつくって海外旅行することを、韓国の2030はすごく重視します。海外旅行から多様性の満足を得ようとしている、といったところです。というか、いまの韓国の2030が知り合いと会って話す内容は、「旅行と投資の話しかない」気もします。

こうした背景に加えて、もともと他人と比べられることを気にする国民性もあって、韓国社会には「海外旅行に行けないのはすごく賎しい」ことと認識する風潮があり、これは若い人たちの間でも同じです。ひょっとすると、彼らは韓国の外に出ることで自分が自分らしいということを表現できると思っているのかもしれません。本当は外国で「なにをどうしたいのか」が重要なのでしょうけれど、主客が転倒しているとでも言いましょうか。

旅行予算
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