「楽しみは登山だけ」の60代よりは多様化

韓国の60代は、「趣味が登山しかない世代」と言われています。もともと登山好き民族(?)といってしまえばそれだけかもしれませんが、他に趣味生活がほとんどできなかった世代だし、強い反共(反・共産主義)・愛国中心教育を受けた世代なので、「国土愛」が無意識的に発露しているという見方もできます。

そうした60代に比べると、いまの韓国の2030の人たちの「楽しみ方」は画期的に多様化されたとも言えます。ですが、私が日本で暮らしているからでしょうか。自分の趣味や好みを求めるという側面では、まだまだ日本には遠く及ばないでいます。

別に観光に限った話ではありませんが、こう考えてみると、韓国人が憧れる世界が日本には存在するのかもしれません。最近、日本に来る外国人観光客たちは、「どうやってそんなところまで知っているのか」と不思議なくらい、日本の各地を楽しんでいます。これは、外国人観光客がソウルに集中している韓国との大きな差でもあります。

写真を撮る観光客
写真=iStock.com/Bill Chizek
※写真はイメージです

日本は「それぞれの楽しみ」を満たせる

もう10年近く前から韓国では日本旅行が大ブームですが、特に若い人たちが求めるものは、数少ない巨大な観光地ではなく、多くの「それぞれの楽しみ」ではないでしょうか。こういうのもまた、日本の強みでもあります。私もそうした外国人観光客の一人だったので、よくわかります。最近はバスツアーなどで、1カ月に1回は日本各地を回っています。

少し話が逸れましたが、そもそも個人主義という指摘は、書き方によってポジティブにもネガティブにもなるでしょう。ただ、個人主義だろうと集団主義だろうと、過ぎれば問題になるのは同じこと。ある程度なら当然の権利意識が強くなっただけとも言えるし、多様な楽しみが見つけられるようになったとも言えるし、別に悪くはありません。他の国でも共通して現れている傾向です。

ちなみに、ここでいう「多様性」は人それぞれの多様さを意味するもので、民族や人種、宗教、性別、年齢などに対して差別的な表現を避け、社会を正していくとする「ポリティカル・コレクトネス」、いわゆるポリコレの話ではありません。部分的に重なる領域はあるかもしれませんが、韓国の2030のポリコレはちょっと他国とは違う面があり、これについては本書で詳しくお話します。