熱心に働いてもお金持ちにはなれない

そして、もう一つは、その「稼ぎ」へのアクセス手段として伝統的に教えられてきた「教育システム」に対する信頼の崩壊です。どれだけ頑張って勉強しても不公正な結果にしかならないという考えが、2030の間で広がっているわけです。

見方にもよりますが、いわば「熱心に働けばお金持ちになれる」と「熱心に頑張ればお金持ちになれる」という二つの教えに対する信頼が崩壊しました。

仮に「お金持ちになれる」ではなく「立派な人になれる」としたなら、結果は少し変わっていたかもしれませんが、韓国というのは不思議なほど物質主義な考えが強く、そうした大人たちを見て育った子供もまた、物質的なものでなにもかもランク付けをする悪い癖があります。

あみだくじのそばに立つビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
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「教育による出世」は過去の話に

かなり以前から多くのメディア、『朝鮮日報』や『中央日報』などのメジャーな新聞社や地上波放送などが取り上げていますが、韓国では小学生の間で「階級論」や「言語暴力」(マイホームを持っていない子を「物乞い」とするなど)が広まっていることが問題となっています。

そのなかには、学校に皆勤する子を「海外旅行にも行けない皆勤物乞い(海外旅行に行く場合は通常、学校を休むことになるので)」と呼ぶという話もあります。こうした胸が苦しくなる話も、「まじめさ」という価値観が崩れている裏付けかもしれません。このように「韓国の青年たちは投資が好き」というのは、単純な投資熱の高まりという形では捉えきれません。

時代の流れでもあるとは思いますが、韓国で「教育による出世」が信頼されなくなったのは、個人的にかなりの衝撃です。私は1970年代に生まれた世代で、大学入試制度そのものが2回も変わるなど、これまで学校文化の変化を経験してきましたが、それでも韓国の学校が教える「出世のための方法」は不変でした。

すなわち、「ただただ、大学入試でいい大学に入れ」、それだけです。死ぬ気で勉強して「サが付く職業になれ」または「大企業に入れ」です。サが付く職業とは、医師、弁護士、検事など、韓国読みで「サ」で終わる職業のことです。最近は、その「サ」で終わる人たちも稼ぎがパッとしないので、「医師になれ」と「サムスン電子に入れ」だけにフレーズの種類も減りました。