「公正なのは投資だけ」と思っている
次に、韓国の2030のアイデンティティ「その2」として、「公正なのは投資だけ」という認識があります。これは、他国に比べてかなりユニークではないでしょうか。同じく青年世代の価値観に関する他国の分析からは、あまり見られない傾向です。たしかにお金の稼ぎ方が多様化されたとか、使い方が多様化されたとか、そんな話はよく聞きます。
生活に必要な資金、またはその目処が立ったら早めに仕事から離れる「FIRE」現象(人にもよりますが、相応の投資と自己資本が必要になります)とか、または極端に使い方を減らす人たちの話もニュースになったりします。逆に、欧米の一部地域では、明日のことはあまり考えずにクレジットカードを乱発する人たちもいると聞きます。
投資というか、生き方にはさまざまなものがあり、ドールを「娘」として本の原稿を書いている私のような元歯科医師もいたりして、ニュースになったりならなかったりしますが、それでも、青年関連で「公正なのは投資だけだと思っている」とする分析など、他国では聞いた記憶がありません。ひょっとすると、韓国特有の現象ではないでしょうか。
お金を稼ぐ経済システムへの信頼が崩壊
この件、「個人的な見方は後にすると言っていたが、これこそ個人的な見解ではないのか」と思われるかもしれませんが、実は2021年5月に韓国の金融監督院(日本の金融庁のような機関)が出した公式レポートの内容です。同月28日の『毎日経済』紙などが記事にしています。
別に投資をしたければ、自分自身と周りに迷惑がかからない範囲内で自己責任でやればいいだけの話です。ですが、実はこの現象からは、二つの「信頼の崩壊」を見出だすことができます。
一つは、これがストレートに「投資が公正だ」という認識を示してはおらず、「他のものより“それでも”投資が公正だ」という認識である点。すなわち、お金を稼ぐという経済活動のすべてが「いくら頑張っても不公正な結果にしかならない」とする、経済システムへの信頼の崩壊です。
結構前にネットでバズったフレーズに、「働けば負けだと思って」というものがありますが、この場合、「まともに働けばバカだと思って」になります。