「明らかにDAZNは異質でした」

この時点で、次期放映権獲得に名乗りを上げていたのは、スカパー!とDAZN、そしてもう1社あったとされる。この国内企業は、早々に撤退しているが、DAZNと同じくOTTでの提案だったという。

「プレゼンに臨んだ事業者の中で、明らかにDAZNは異質でした」と語るのは、チェアマンの村井。その理由について、こう続ける。

「まず、唯一の外資であったこと。そしてOTTによる配信を提案していたこと。ただし、この段階でDAZNは、まだOTTのサービスを始めていません。つまりオリエンの時点では、実績もなければ実体さえもなかったわけです」

「新しい視聴環境」「フットボールへの理解度」が心を動かした

実績もなければ実体もなく、しかも外資。にもかかわらず、なぜJリーグはDAZNを選んだのか?

DAZN側の提示した金額と契約期間が、最も魅力的だったことは想像に難くない。そのことは暗に認めつつ、しかし「それだけではなかった」として、村井はふたつの理由を挙げている。

まず「新しい視聴環境」。

「DAZN側がプレゼンで見せた動画が、実に衝撃的でした。ベッドから飛び起きたら視る、電車の通勤中に視る、休み時間にみんなで視る。家族がTVの前に座って、番組が始まるのを待つという、それまでの視聴環境とは明らかに違う。いつでもどこでも、好きな時に好きな場所で、デバイスを通してスポーツ中継が楽しめるわけです」

今となっては、当たり前の光景に思えるかもしれない。しかし、DAZNのプレゼンテーションを見た村井は「これが次の時代の視聴環境なのか!」と感銘を受けたという。

もうひとつ、Jリーグの心を動かしたのが「フットボールへの理解度」。

「動画を見て、フットボールの理解度が高いことが伝わってきたんです。カメラワークしかり、スイッチングしかり、アングルや切り取り方しかり。もともとゴール・ドットコムで各国リーグのクリップ動画を集めたり、オプタ・スポーツでの膨大なスタッツデータを持っていたり、というのがDAZNでした。そうした彼らの知見やノウハウといったものも、われわれには魅力的に感じられたんですね」

写真=iStock.com/Dziurek
知見やノウハウが魅力的に感じられた(※写真はイメージです)