優勝を争う国の選手は、どこのクラブに所属しているか
――吉田麻也選手、三笘薫選手、堂安律選手などW杯カタール大会で活躍した日本代表選手の多くは、10代をJリーグのジュニアユースやユースで過ごしています。育成の主体が学校の部活からJクラブに移りつつあるわけですが、そんな中でJリーグは2019年、ワールドクラスの選手を輩出することを目的にした「PROJECT DNA」を始動させました。
【村井】2018年のW杯ロシア大会はフランスの優勝で終わりましたが、私が注目したのは久々にベスト4まで勝ち進んだサッカーの母国、イングランドの躍進でした。
ロシアに滞在している間はわりと時間があったので、出場32チームの全選手の経歴をエクセルに入力して、どのクラブの出身なのか洗い出しました。
ドイツもイングランドも自国リーグの選手が多かった
優勝したフランス代表の場合、重要なグループステージ初戦のスタメンのうち自国のリーグ・アンでプレーしていたのはパリ・サンジェルマン所属のエムバペだけ。他の選手はイングランド・プレミアやドイツのブンデスリーガ、スペインのラ・リーガなどのクラブに所属していました。ドイツ代表は自国で一番強いバイエルン・ミュンヘンの選手が6~7人で、他も自国リーグの選手が多かった。イングランドの場合は、ほとんどの選手が自国のプレミアリーグでプレーしていました。
つまりW杯でベスト4以上に進むためには、まずJリーグがプレミアリーグやブンデスリーガと同じレベルにならなければならない。そこでクラブの育成能力を客観的に評価・採点しているベルギーのベンチャー企業に依頼して、Jリーグとブンデスリーガの育成力の比較をしてもらいました。
この会社は400項目から5000点満点でクラブの育成力を評価するのですが、その内容は多岐にわたります。タレント発掘力やチーム強化のレベルだけではなく、変わらぬ育成哲学を持っているか、クラブ収入の多寡で育成原資が左右されないような予算措置や恒常的な組織構造を持っているか、青少年の心理面やキャリア面をサポートする専門家含めスタッフの充実度、施設設備面のレベルなどを丁寧に調査していきます。特に個の育成に関しては極めて重視しています。