正月の駅伝に出る選手は“レギュラー”だが、チームには裏方に甘んじる多くの選手がいる。ニューイヤー駅伝で走るトヨタ紡織の羽生拓矢(25)は東海大学時代、一度も箱根を走ることができなかった。スポーツライターの酒井政人さんは「高校時代は世代最強のモンスターと呼ばれた黄金世代の筆頭格でしたが、大学時は低迷。社会人になって好タイムを連発し、表舞台に見事返り咲きました」。なぜ、どん底から復活逆襲できたのか――。
力走する羽生
写真=時事通信フォト
陸上の八王子ロングディスタンスで力走する羽生拓矢(右)=2022年11月26日、東京・町田GIONスタジアム

“世代最強モンスター”が箱根を一度も走れなかった理由

11月26日の「八王子ロングディスタンス(10000m)」には、正月のニューイヤー駅伝や箱根駅伝に出場する国内トップ選手が集結した。そのなかで両駅伝の出場経験がない、“非エリート”の選手が日本人トップを飾り、関係者をざわつかせている。

社会人3年目、25歳の羽生拓矢(トヨタ紡織)だ。

10月上旬にマークした自己記録(28分12秒68)を大幅更新。日本歴代4位&今季日本最高となる27分27秒49を叩き出したのだ。

羽生の大学時代の恩師である東海大・両角速駅伝監督は、「レース前に私のところに挨拶に来てくれたんですけど、自信がありそうな感じでしたね。でも、あそこまで走るとは思わなかった。本人も含めて誰も思っていなかったんじゃないでしょうか」と言うほど“衝撃の快走”だった。

羽生は高校時代に世代トップの活躍を見せながら、大学で挫折した選手。どのように這い上がってきたのだろうか。