ブンデスリーガを100点としたら、Jリーグは…

日本にオーディター(調査員)がやってきて、ストップウォッチを片手にJリーグユースの練習を観察していました。何を測っているのか尋ねると「オーナーシップをもって練習している比率を見ている」と言います。

オーナーシップとは子供達が自発的に考案して練習することです。最初から最後までコーチが考えたメニューをこなす日本式の練習は「オーナーシップが足りない」と評価されます。試合のオーナーシップを握るのはピッチの選手です。ベンチが動かすわけではない。なので日ごろの練習からそうした自立性を求めているのです。

結果的にブンデスリーガを100点とした場合、Jリーグは40点という結果が出ました。

――絶望的な差ですね。

【村井】いや、そうは思いませんでした。むしろ「日本サッカーにはこんなに伸び代があるのか」とうれしくなりました。

前回、お話ししたようにドイツの育成についても色々調べたのですが、ドイツより強い関心を持ったのはイングランドでした。イングランドの場合、プレミアリーグに世界中の有力選手が集まりすぎて、リーグは盛り上がるが自国の若手がなかなか育たない、という状況が長く続いていました。しかしロシア大会前後のイングランドの選手育成は明らかに結果を出していたのです。

長期的な育成プランで若い選手への投資を

2017年のアンダー17とアンダー20のW杯で優勝しており、アンダー19も欧州選手権で優勝しています。若い世代がメキメキと力をつけ、その成果がW杯ロシア大会のベスト4という形で表れました。人材の底上げに成功した感じでした。

イングランドはいったい何をやったのか。調べてみると2012年にEトリプルP(エリート・プレーヤー・パフォーマンス・プラン)という育成プログラムを導入していたことがわかりました。

――いわゆる英才教育ですね。2022年カタール大会では優勝したフランスに敗れベスト8で終わったイングランドですが、ベリンガム(19)、サカ(21)、フォーデン(22)といった若い選手が躍動しました。

【村井】面白いのはそのプログラムを主導したのがFA(イングランドサッカー協会)ではなく、プレミアリーグのクラブで構成するプロサッカー協会だったことです。当時からプレミアリーグは巨額の収益を上げていましたが、キャリアのある年齢が上の選手に多くの報酬が支払われていました。ある時、プレミアリーグの全社長が集まって話し合い「長期的な育成プランを持って若い選手たちにもっと投資していくべきだ」と意見が一致しました。