Jリーグは2018年シーズンの開幕戦で、初めて金曜日に試合を行った。なぜ週末ではなく、観客動員の減る平日開催を導入したのか。チェアマンを4期8年務めた村井満さんに、ジャーナリストの大西康之さんが聞いた――。(第22回)
2014年にチェアマンに就任した村井満さん。任期最終年の2021年には毎週1枚の色紙を用意して、朝礼を開いた。
撮影=奥谷仁
2014年にチェアマンに就任した村井満さん。任期最終年の2021年には毎週1枚の色紙を用意して、朝礼を開いた。

「平日開催」はDAZNからの提案だった

――このたび、村井さんは日本バドミントン協会の会長に就任することが決まりました。職員による着服など不祥事続きのバドミントン協会をどう改革していくのか、注目が集まっています。バドミントン協会には大改革が必要だと思いますが、Jリーグチェアマンの時もそうだったように、大胆に何かを変えようとすると、はじめは反対意見が多数を占めますよね。

【村井】第20回〈反対意見にこそ問題解決のヒントがある…全試合中止のJリーグから「世界最高の感染対策」が生まれた理由〉でも言いましたが、反対意見がある時、もっと言えば反対多数の時こそ、その組織が大きく変わるチャンスなんですね。今日はJリーグの平日開催、いわゆる「フライデーナイトJリーグ」が実現した舞台裏から、われわれがどうやって反対多数の状況を変えていったかについてお話ししましょう。

――そもそも「定期的に平日開催を取り入れよう」という話は誰が言い出したのですか。

【村井】(2017年シーズンからJリーグの全試合をネット配信している)DAZN(ダゾーン)さんです。最初のシーズンが終盤に近付いた段階で「こんな変革が必要なんじゃないか」という提案がいくつかあり、その中に「平日開催」が入っていました。

「日本の文化に馴染まない」「コアサポーターが離れていく」

――DAZNが「平日開催」を提案した理由は何ですか。

【村井】ライブで試合を配信するDAZNさんの立場で言えば、一人でも多くの視聴者を獲得したいわけです。すべての試合が週末に集中していると、同時刻に複数の試合が開催されることになり、ライブでは視聴者はその中の1試合しか見られない。平日開催を取り入れて試合を分散させれば、視聴者は多くの試合をライブで見る機会が増えます。

【連載】「Jの金言」はこちら
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実際に欧州ではトップリーグの試合が月曜日や金曜日にも開催されていて、視聴者の裾野を広げる効果も分かっていました。「欧州はこうやってファンの裾野を広げてきた。日本でもやってみてはどうか」というDAZNさんの提案を聞いた時、私自身は「なるほど一理あるな」と思いました。

――ところが周囲は大反対。

【村井】実行委員会にはかったところ、見事に全クラブが反対でした。当時の議事録を見ると「金曜開催は困難」と書いてあります。理由はこんな感じです。

「これまでJリーグは土日に価値があるということでやってきた。積み上げてきた歴史がある」
「(平日開催は)日本の文化に馴染なじまない」
「コアサポーターが離れていくリスクがある」
「仕事の都合で平日夜のアウェイ試合にはサポーターは行けない」
「金曜日開催では入場者が減少するという実績を覆す仮説は描けない」