「可燃ごみ・不燃ごみ1430kg」「金属類280g」を搬出

横須賀市のごみ屋敷に居住するAさんは、ごみ集積場に排出される廃棄物を無断で持ち去り、Aさんが居住している建物内やその建物の敷地、ベランダ、複数の人が共有している私道にごみを堆積していました。平成27年7月から、横須賀市は、職員が84回の訪問による撤去指導を行い、保健師が22回にわたる訪問により健康上の相談に応じていました。その他の支援も行われましたが、結局、ごみ屋敷の解消には至りませんでした。

横須賀市は、Aさんの同意を得たうえで、ごみ屋敷対策条例に基づき立ち入り検査を行ったところ、大量のごみの存在、害虫やねずみ、悪臭の発生を確認しました。また、ごみの中には電池やスプレー缶があり、火災の恐れがあることも明らかとなりました。その後も文書による行政指導やごみの撤去の命令なども行いましたが、改善されず、ついに平成30年8月28日に行政代執行が行われました。

搬出されたごみは、可燃ごみ及び不燃ごみ1430kg、金属類280kgでした。また、代執行に併せて害虫駆除も行われました。しかし、行政代執行が行われた後も、Aさんはごみ集積場からのごみの持ち帰りを継続し、敷地内に再びごみを堆積させており、問題の根本的な解決には至っていないようです。

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行政指導などを粘り強く続けることが一般的

5 行政代執行の問題点

基本的に、第三者から見てごみであったとしても、所有者からするとごみではない場合もあり、それを行政が強制的に撤去することは、国家が国民の財産権を強制的に処分することになります。自治体としても、行政代執行を行うこと自体には慎重な姿勢を見せており、行政指導などを粘り強く続けることで事態の収束を図っていくことが一般的です。

また、自宅をごみ屋敷にしてしまう人は、認知症や高齢化に伴う身体機能の低下、セルフネグレクトなどの問題を抱えている場合があります。このような場合だと、行政代執行をしたところで、またいずれごみ屋敷化してしまう可能性が高くなります。こうなってしまうと、仮に行政代執行をしたとしても、それは一時的な対策にすぎず、根本的な解決になりません。行政代執行さえ行えば問題が解決するというわけでもないのです。

そこで、行政指導を継続的に行う一方で、医師や保健師などの専門家による福祉的なケアサービスも併用することで、対症療法的手法である行政代執行だけではなく、所有者に対する原因療法的手法によっても根本的な解決を図っていく必要があります。