民法改正により新たな手段も登場している

6 管理不全土地・建物管理制度

行政代執行以外のごみ屋敷対策の方法として注目されているのが、民法改正により、2023(令和5)年4月1日から施行されている「管理不全土地・建物管理制度」です(民法264条の9以下)。

この制度は、所有者による管理が適切にされていない土地等に関して、裁判所に関与してもらいながら、問題の解決を図っていくものです。具体的な流れを以下で説明します。

まず、利害関係人が、裁判所に対して、土地等の管理人を選任するように請求します。裁判所は、所有者による土地等の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害されている、又は侵害されるおそれがあるかどうかを判断します。そのうえで、必要があると認めるときに、裁判所は管理人を選任して管理を命じます。

選任された管理人は、対象とされた土地等及び管理命令の効力が及ぶ動産等について、所有者に代わって管理を行うことになります。管理人は、保存行為及び土地等の性質を変えない範囲の利用・改良行為については自らの判断で行うことができますが、この範囲を超える場合には、裁判所の許可を得て行わなければなりません。

裁判官が使用する木製のハンマー
写真=iStock.com/Marilyn Nieves
※写真はイメージです

隣地所有者がイニシアティブを持てるが未知数な部分も多い

この制度は、行政代執行のように行政に対応してもらわないと解決しない方法とは異なり、実際に被害を受けている隣地所有者が自らイニシアティブをもって進めていくことが可能な方法といえます。したがって、ごみ屋敷問題を解決するためには有用な手段といえるでしょう。ただ、どのようなケースで裁判所が管理命令を出すのか、実際に選任された管理者が具体的にどこまで対応してくれるのか、いまだ未知数な部分も多く、今後の実際の運用の集積を待つ必要があります。

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