行政代執行法によりごみを処分するまでには段階がある

3 ごみ屋敷対策条例の具体例

ここで、足立区のごみ屋敷対策条例(正式名称は「足立区生活環境の保全に関する条例」)を例にとって、手続の流れを説明します。

まず、ごみ屋敷対策条例は、土地又は建物(以下「土地等」といいます)の所有者、占有者及び管理者(以下「所有者等」といいます)に対して、その土地等を不良な状態にしてはならない旨の義務を課しています。そして、この義務に違反して土地等が不良な状態であると認められるときには、自治体は、所有者等に対して、土地等の不良な状態を解消するよう行政指導をすることができます。

この行政指導がなされたにもかかわらず、土地等の不良な状態が継続するときは、自治体は、所有者等に対して、土地等の不良な状態を解消するための措置を取るべきことを、期限を定めて勧告することができます。その勧告があったにもかかわらず、未だに土地等が不良な状態にあると認められるときは、自治体は、所有者等に対して、期限を定めて、土地等の不良な状態を解消するための措置を命ずることができます。

そして、所有者等がこの命令に正当な理由なく従わないときは、自治体は、所有者等の氏名や住所を公表することができます。さらに、命令に正当な理由なく従わない場合において、他の手段によって土地等の不良な状態の解消を確保することが困難であり、かつ、その解消しない状態を放置することが著しく公益に反すると認められるときには、自治体は、行政代執行法により強制的にごみを処分することができます。

服などが乱雑に積まれた部屋
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

横須賀市で行われた行政代執行

4 行政代執行が行われた具体例

以下では、このごみ屋敷対策条例により行政代執行が行われた横須賀市の事例を紹介します。

ごみ屋敷による近隣の生活環境の悪化の問題が全国的に顕在化しており、横須賀市においても同様の問題の発生件数が増加傾向にありました。しかし、当時の法令では対処が難しいことから、横須賀市は、平成29年12月にごみ屋敷対策条例(正式名称は「横須賀市不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例」)を制定(平成30年4月1日施行)しました。横須賀市のごみ屋敷対策条例は、「不良な生活環境」を、「物の堆積等に起因する害虫、ねずみ又は悪臭の発生、火災の発生、物の崩落のおそれその他これらに準ずる影響により、当該物の堆積等がされた建築物等又はその近隣における生活環境が損なわれている状態をいう。」と定義しました。

横須賀市のごみ屋敷対策条例が適用され、実際に行政代執行まで行われた事例は次のようなものでした。