カーナビの使い方でわかる思考のクセ

大きく分けて、思考のクセには二つの軸があります。一つは「長短」、もう一つは「正負」です。

「長短」は、物事を長い時間軸で捉えるか、短い時間軸で捉えるか、です。

これは「全体を俯瞰する」のが好きなのか、「個別を注視する」のに関心があるかの違いでもあります。

たとえば、カーナビゲーションシステム。これまでいろんな人のカーナビの使い方を見てきましたが、大きく二つに分かれていました。

一つは、現在地から目的地まで一望できるくらいに地図を縮小する使い方です。常に自分が今、全体のどのあたりにいるのかを把握できる俯瞰図ですね。そして細かな進路変更が生じた場合のみ、その都度現在地にフォーカスするようなタイプです。

もう一つは、常に現在地を大きく映しながら、目先の道順を拡大地図上で追っていく人。

極端に言えば、カーナビ上の車と実際の自分を同時進行させていくようなタイプです。

私はと言えば、前者です。全体を俯瞰しながら、適宜状況判断をするほうでした。

平井孝志『人生は図で考える 後半生の時間を最大化する思考法』(朝日新書)

そんな思考のクセが、計画好きの原点でもありました。「おでん図」や、「中期計画」に「年次計画」。さらには「月次計画」「週次計画」もつくって、日々の自分をコントロールする。そんな全体と目先を行き来する思考のクセが仕事の上でも役立ちました。

しかし、「相転移」を経た後半生は、必ずしも同じではありません。

遠い将来のキャリア形成を念頭にギラギラする必要はないのです。

今日や明日だけを考える、と言えば極端すぎるかもしれませんが、数十年単位で目標を掲げる必要はなく、むしろ1年あるいは2〜3年程度のタイムスパンで物事を捉え(先ほどの中期、年次程度)、その上で日々に集中する。そうすることで、漠とした後半生にいくつものドラマが生まれてくるのです。

ポジティブか、ネガティブか…

二つ目の「正負」は、物事をポジティブに見るか、ネガティブに見るか、という思考のクセです。

写真=iStock.com/DrAfter123
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私は主たるキャリアがコンサルタントであったため、物事をどうも批判的かつネガティブに見る傾向が強いようです。

しかし今を充実させる観点からは、こうしたネガティブな発想は、はっきり言って損なのです。私の場合、物事をよりポジティブに捉える努力が必要だと自覚しています。

ただし、ポジティブすぎるのも考えものです。

なぜなら、明らかに知力・体力は衰えていくし、自分で責任が取れるリスクも限界があります。それゆえ後半生は、あまりにネガティブでもなくあまりにポジティブでもない、という中間が適切だというのが私の考えです。