強いスーパーは「製造業」である

アパレル事業から撤退する一方、ヨーカ堂は、グループ戦略の軸となる「食」にフォーカスするという施策を打ち出している。昨年9月には、同じセブン&アイ傘下で首都圏をテリトリーとしてきた食品スーパーのヨークを吸収合併した。

ヨークマート草加店(写真=LERK/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「食」へのフォーカスも、専門性とブランディングが成功のカギとなる。従来の商品を仕入れて販売する小売業から、自社で商品の開発・製造を手がける製造小売業(SPA)にシフトすることが求められるからだ。

流通業界では「強いスーパーは製造業」だといわれる。先ほど触れたように成城石井の利益率が高いのも、自家製の惣菜やスイーツでSPAとして成功したことが理由の1つだ。

成城石井は自社開発の商品を製造する工場を持ち、直営店やフランチャイズ店がない地域などで他社のスーパーに自社製品を卸している。テレビなどで成城石井ブランドの商品が紹介されると、「買いたい」という地方の消費者もいるからだ。SPAで成功したのは、食料品に強いという専門性とブランディングの成果だといえる。

なぜ「地方スーパー」に朝から行列ができるのか

成城石井ほどの規模がなくても、専門性とブランディングで成功することはある。メディアでたびたび紹介されている「さいちのおはぎ」が好例だ。

「主婦の店 さいち」は仙台市内の秋保温泉街にある個人経営の小さなスーパーで、朝から店先に行列ができるほど自家製のおはぎが大人気となっている。1個100円ほどのおはぎが1日に5000個売れると評判になり、仙台駅のショップでも販売され、1日に2万5000個が売れたこともあるという。昨年4月にはチロルチョコとのコラボ商品が東北地方限定で発売された。

主婦の店 さいち(写真=Genk18/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ヨーカ堂も「食」にフォーカスした結果、ヨーカ堂ブランドの食品が人気となり、SPA企業として成功する可能性はある。まずは「もっとおいしい商品」「どこよりもおいしい商品」を開発できる体制を築き、開発・製造・販売を三位一体で強化する必要がある。