大量摂取してしまう健康食品のリスク
これが食品です。多数の栄養素や毒性物質や微生物を含み、加熱では制御できないリスクがあります。さらに、調理で発がん物質が作られることも知られています。食品になにが含まれているか、科学で完全に把握できているわけではありません。
主食であるコメでさえも、100%わかっているわけではありません。ましてや、今まで食べられてこなかった植物や菌は、なにがどの程度含まれるのか、栽培や培養の違いによりできるものがどう変わるか、把握は非常に難しい。というよりも、不可能です。
こんなことを書くと、食品はあれも、これも、危ないのか? と不安を呼び起こしそうです。しかし、心配しないでください。通常の食品形態であれば、急にこれまでの数倍、10倍量を毎日食べる、というのは無理です。これにより、安全マージンが小さくても、ぎりぎりのところで安全が守られる。それが、一般的な食事の形態です。
ところが、錠剤やカプセル、粉末などの加工による健康食品化、サプリメント化は、大量摂取かつ毎日摂取が容易になり、自分がなにを食べているのか知らないまま、特定の物質が簡単に安全マージンを超える、ということが起こり得ます。これが、加工の怖さです。
食品にかけられる開発費には限界がある
医薬品の中にも、植物や細菌培養などにより得た化学物質を、抽出濃縮したものがあります。サプリメントも同じではないか、医薬品と同様にGMP(適正な製造・品質管理)を実行すればよい、という主張もありますが、医薬品と食品ではそもそも、開発費がまったく異なります。
医薬品の場合には、多数の試験を行い、不純物も調べ、精製度を上げることが要求され、莫大な開発費がかかります。一方、食品は、多数の有効性試験や安全性試験が要求され国が製品ごとに審査を行う特定保健用食品(トクホ)でさえも、かかる金額は少ないとされます。農薬や食品添加物よりも少ないのです。食品にかけられる費用には限界があります。
なのに、多くの人が医薬品よりも、「食品だから」「伝統的なものだから」「自然だから」、よいと思い、魅力を感じてしまう。まことに皮肉としか言いようがありません。