人権を説いてきた欧米のダブルスタンダード

もちろん、イスラム教徒からの攻撃のリスクがもっとも高いのはヨーロッパとアメリカである。パレスチナ支援のデモさえ認めないというから、ムスリムから見ると「イスラムの敵」として立ち現れたことになる。

常日頃、言論の自由、表現の自由をうたい、人権を説いてきた欧米諸国のダブルスタンダードは世界に深刻な影響をもたらす。イスラエル国家の非道を批判することと反ユダヤ主義の区別もできない状況は極めて危険だ。

2023年12月4日に報じられたのだが、パレスチナでの犠牲者が多いことを問われて、米上院、共和党のリンゼー・グラム議員はCNNのインタビュー番組の中でこう述べた。

「パールハーバーの後、米軍の攻撃で東京が壊滅しようと、東京で何人死のうと、誰が気にしたというのだ?」

彼は同じことをベルリンの破壊と死者についても言っている。実に不愉快だが、戦争を止めようとしない欧米諸国の本音が垣間見える発言である。

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イスラエル建国以来、初の「本土襲撃」

アメリカは第二次世界大戦後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン侵攻、イラク戦争といくつも戦争をしてきた。どれをとっても、ベルリンと東京を灰燼かいじんに帰して得たほどのものは得ていない。そして、湾岸戦争以降は、身内の兵士と「敵側」民間人の犠牲者の数を気にするようになった。

今回、イスラエルは建国以来、初めて大規模に「本土」が襲われ、多大の被害を受けた。そのため、総力で敵をねじ伏せ、そのためにパレスチナ人が何人死のうと知ったことではないという姿勢である。これは、アメリカにとっての「パールハーバー」か「9.11」なのであって、だからこそ、グラムの発言に至るのである。

だが、ドイツやフランスは、少しずつスタンスを変えてきている。相変わらず、イスラエルの自衛権は擁護するものの、桁外れの犠牲者がパレスチナ市民(ガザのみならずヨルダン川西岸でも)に出ていることは容認できないという姿勢も見せている。これは、アメリカのブリンケン国務長官の発言にも表れていて、ガザ北部での惨状をガザ南部で見たくないという趣旨の発言をしている。