電気自動車はまだ大量導入すべきでない
グリーン成長戦略に掲げられているさまざまな技術がいつ導入されるかは、基礎的な技術開発の成否にかかっています。
経済性を有するようになれば導入すればよいのですが、まったく予断はできません。これらの技術は、実は30年以上前から取り組んできたものばかりなのです。
科学技術は全般に進歩しているので、今後30年の間にブレークスルーが現れ、普及が進む可能性はあります。それゆえ、研究開発を進めることは結構なのですが、過度な楽観論は根拠がありません。
例えば、電気自動車についてはどうでしょうか?
電気自動車はいまだ高価なので大量導入すべきではありません。しかし、バッテリーの技術革新があれば、運輸部門の半分を占める乗用車は経済的に電化され得ます(トラックの電化は乗用車より普及の敷居は高くなります)。
このようにバッテリーの技術革新が実現可能かどうかは予断できませんが、研究開発に取り組む価値はあるでしょう。
ユートピア的な脱炭素化より、現実的なシナリオを
今の政府のグリーン成長戦略のままでは、膨大なコストがかかり、人々の生活水準が著しく低下します。社会は不安定となり、最終的には脱炭素にも失敗します。
筆者の提案する戦略では「2050年まで」という目標期限を達成することはできません。しかしながら、日本社会を不安定にすることなく、十分に迅速かつ継続的にCO2排出量を削減することはできます。
技術開発に伴い、経済的に魅力ある手段が増えれば、CO2排出量をさらに削減することもできるでしょう。
これは従来のユートピア的な脱炭素化のシナリオではなく、現実的なシナリオです。日本の経済力を高め、安全保障を強化するものにもなっています。革新炉、SMRや核融合の技術を確立すれば、重要な輸出産業にもなるでしょう。