“勝ち組”ネパール人の怖い本音

こうした仕事はBさんのように日本暮らしが長く、日本語が堪能で、日本人とのつながりも深く広いネパール人が担ってきたようだ。

ずっと厨房で働いていて日本語がそこまでわからないコックや、彼らにネパールでもさらに田舎から日本に呼ばれたばかりの家族たちは、Bさんたち古参に頼り、開業していく。「第1世代」の中に仲介業に特化した人々がいたために、「インネパ」はさらに増えていった……。

室橋裕和『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(集英社新書)

Bさんの話を聞きながら、僕は唸った。これぞまさしく先行利益、いつの世もシステムをつくる者が勝つのである。まさに時代の波を読み、うまく乗った仲介業の人々の中には、相当な財を成した方もいるらしい。

だがそんな「勝ち組」と話していると、同じネパール人を飯のタネにする、利用することへのやましさをあまり感じていない様子であることも気になった。後進のために道を拓らくという気概よりも、徹底してビジネスなのである。

「あの人たちは教育を受けてないからね、あまり能力ないの。だから私たちが儲かる」と、悪気もない様子で後続の同胞のことを語るBさんの笑顔に、出稼ぎ国家の怖さを見た気がした。

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