処理能力が上がっても意味がない

こうした中、エヌビディアは3月18日に生成AI向けに特化した画像処理半導体(GPU)プラットフォーム「Blackwell」を発表した。「数兆パラメータでリアルタイム生成AIを構築および実行できる強大な処理能力」がウリである。

写真=時事通信フォト
新たなAI向け半導体「ブラックウェル」を掲げる、米エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(2024年3月18日、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼ)

また、OpenAIは2月15日、人工知能モデル「Sora」を発表。テキストの指示に基づいて、最大1分間の現実的で想像力豊かな映像を生成できるとあって、多くの人がその精緻さに目を見張った。

同じくOpenAIと資本提携している米スタートアップFigure AIも、極めて人間に近い振る舞いをするヒューマノイド(人型ロボット)の動画を公表して話題を呼んだ。

だが、いくら処理能力が向上しても、実際のサービスが使いモノにならなければ意味がない。

今後、生成AIの導入・移行を断念するケースが増えてくる

そもそも、本当に実用的で便利なものなら、企業は先を争って生成AIの利用を進めるはずだが、今のところそうはなっていない。

「5分から10分の充電で満タンのガソリン車くらいの距離を走れなければ、EVにはガソリン車と同じレベルの需要はない」と言われるのと同様に、生成AIも能力面でまだまだ問題を抱えているからで、それは一朝一夕には改善しない。

そのため、この先数カ月から数年の間に企業や組織が生成AIの実力調査や試運転を通して、生成AIの導入・移行を断念するケースが増えてくる可能性がある。

そうなれば、実需の爆発的な増大を見込んで建設されたテック大手のデータセンターは、処理能力が余剰となってしまう。