ウォール街はAIバブルに沸いている
生成型人工知能(AI)へのウォール街の熱狂が止まらない。
「地球上で最も重要な銘柄」と呼ばれ、年初来の上げ幅が約90%というAI半導体大手の米エヌビディアを筆頭に、メタ(年初来40%近い上げ)、アマゾン(同20%近く)、マイクロソフト(同およそ15%)などAI銘柄が超元気だ。注目すべきは、そのほとんどの上昇分が将来のAI実需を前提とした「期待先行型」であることだ。
将来の生成AI市場についても、非常に楽観的で景気のいい予測がなされている。
米ブルームバーグ・インテリジェンスは2023年6月、グローバル生成AI市場は、2022年の実績で400億ドル(約6兆円)規模から、10年後の2032年には1兆3040億ドル(約197兆円)へと飛躍的な生長を遂げると発表。また2032年には法人IT支出に占める生成AIの割合が全体の12%にまで増大するとしている。
インドの調査企業フォーチュン・ビジネス・インサイトが2023年12月に公表した予測はさらに楽観的で、生成AI市場の規模は2030年に2兆251億ドル(約306兆円)にまで成長するとしている。
まさに「EVバブル」を彷彿とさせる
このようなバラ色の未来予測は、5年ほど前の電気自動車(EV)市場の急拡大予想を彷彿とさせる。
当時は「時代はEV」であり、普及は急速に進むはずであった。
事実、2020年から2023年にかけてEV市場は倍々ゲームの成長を見せたのだが、昨年後半からはにわかに失速している。
その大きな理由として、まだまだ発展途上であるEVが、信頼性に欠け、不便であることが知られるようになり、一般消費者が購入をためらっていることが挙げられる。
同様に、市場を白熱させているAIの応用も、まだ実用の域に達していない分野が多く、信頼性と利便性の問題から急失速する可能性がある。
本稿では、「生成AIはビジネスとしてスケール(規模が拡大)できるのか、マネタイズ(収益化)できるのか」という問いを中心に、生成AIがどの分野でどれくらい実際に使われているのかを分析し、企業が生産現場や対顧客・対取引先向けに生成AI導入をためらわせる「失敗」の実例を見ていく。
そして、生成AIの利用が思ったように増えていない統計を示し、生成AIが「第2のEV」になる、もうひとつの未来予測を提示する。